ずっと何も言葉を発しない青峰くんに不安が募る。
青峰くんのおデコを叩いちゃった事、謝らなきゃ。
でも言い出しにくい。
何とか言わなきゃと口を開けた所で、急に青峰くんが動いた。
「!」
「…帰んぞ」
突然ぎゅっと手を握られて引っ張られた。
そのまま有無を言わせず歩き出す。
驚いたはずなのにこの状況に酷くホッとしている私。
そういえば今まで当たり前の様にこうされていたんだっけ。
なんだか懐かしく感じる。
今日は私も…
思わずその手を握り返していた。
「!?」
「っぅえ!?」
途端、歩みが止まる。
繋がれた手に引っ張られて私も立ち止まった。
だけど何か言ってくれるわけではないみたい。
嫌だったかなと青峰くんの表情を窺おうと隣を見て、私も動きを止める事になった。
「あ、青峰くん…」
「!…んだよ」
「な、何でも…ないです…」
嘘。
何でもないわけあるか!
ちょっと、青峰くん。
か、顔…赤い。
私まで恥ずかしくなって来て顔に熱が集まり始めた。
どうしよう。
青峰くんは黒いから分かりにくいけど私すぐバレる。
あ、黒いからっていう発言は秘密で。
「…お前だって顔赤いじゃねーか」
「そんな事無いし!」
「はぁ?真っ赤だっつの!」
「青峰くんは赤黒いけどね!」
「んだとコラ!」
「ちょ、手痛い!あんまり強く握らないでよ!」
「大袈裟だろ!ちょっと掴んでるだけじゃねーか!」
「もう何なの!暫く連絡取らなかったのにいきなり来たと思えばっ、!?」
私の文句は全部言い終える前に途切れた。
なんでかって、それは…
「…」
「…青峰くん、く、苦しいです」
思いっきり抱き締められたのだ。
締め上げられるのかと思う程強く。
大きな体が私を包み込んでいる。
心臓が抱き締められている圧迫感と異常なまでのドキドキで壊れてしまいそうだ。
「…」
「あ、あのー」
「…悪かった」
「え」
「お前が、いつの間にか色んなヤツと知り合いんなってて」
「?」
「特に若松のヤロウなんか、完全にお前の事狙ってやがるし…」
「…」
「俺が一番にお前と知り合ったっつーのに、」
「あ、青峰くん…」
「ったくどいつもこいつも…俺のもんに近付くんじゃねーよ、くそ」
「!?」
ちょっと…待って。
いきなり謝ったと思ったら急にキレ出してるし。
それに、今のって。
『俺のもん』
脳内で再生して眩暈がした。
私の心臓は今にも壊れそうだし頭なんてもうパンク寸前だ。
「…」
「…」
「…」
「…何黙ってんだよ」
「!」
「名前」
「ええと、とりあえず…離して貰おうかな、なんて」
「は?無理」
「え!」
無理と言い切った青峰くんは抱き締めている腕を少しだけ緩めて、身を屈めて私の首に顔を埋めて来た。
青い髪が肌に当たって擽ったい。
じゃなくて!
「俺のもんって何!?」
「俺のもんは俺のもんだろーが」
「ジャイ○ンか!」
「なんのツッコミだよ」
「いきなりそんな事言われても意味分かんないし!」
「はぁ?お前バカか?」
「な!ひどっ!」
青峰くんはむくりと顔を持ち上げて私を暫く見つめて…
パッと目を逸らした。
そして…
「っだーから!好きだっつってんだよ!お前が!」
「!!」
「いつからだとか、そんなん分かんねーけど」
「っ」
「分かったかコラ」
「え、えと…うん」
「…言っとくけどよ。逃がさねーし、若松のヤロウのとこなんかに行かせねーから」
鋭い視線に射抜かれる
完全に自覚した自分の思い
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