青に染まる | ナノ

問われる

「名前ちゃん名前ちゃん」
「…はい、なんでしょう先輩」
「俺の言いたい事分かる?」
「はい、痛い程に」
今先輩とお弁当コーナーの品出しをしている。
いつも通りのはずなんだけどそのいつもの光景にそぐわぬ物が視界の端に。
「アレ、わざとなの?」
「ど、どうですかね」
「立ち読みってさ、たいていっていうか確実に皆外向いてするもんだよね」
「はい、その通りですよね」
雑誌コーナーに見るからに不審な影。
っていっても既に見慣れてしまった人物なんだけど。
そう、青峰くんだ。
雑誌を開いているんだけど何故か体はコチラ、つまりお弁当コーナーに向いていて、私がふと顔を上げれば目が合う程だ。
まあ目が合えば明らかに不自然に逸らされてしまうんだけど。
「何かあったの?」
「ないと思うんですけど」
「めっちゃ見てるよ」
「…はい」
「熱視線なら可愛いもんだけど、見てよあの目」
「あ、あはは」
「俺目が合うと射殺されそうなんだけど」
「た、確かに怖いですハイ」
「彼ってさ、名前ちゃんの事大っ好きなんだろうね」
「!そ、それは違うと思うんですけど」
「え?見るからにそうでしょ!名前ちゃん大好きがビシバシ伝わって来るよ?」
「う、そ、そんな…」
「あのさ」
「はい?」
「もしかしなくても勘違いされてるんじゃない?」
「勘違い?何を?」
「俺が名前ちゃんの事好きとか」
「ぶっ」
「いやいや、もしホントにそう思われてるんだとした俺超怖いから!名前ちゃん、しっかり弁明頼むよ!」
「ええ?そんな事な……あ」
「ほら、睨んでる」
「…」
…めんどくさい。

バイトが終わるまでの40分程、青峰くんはずっと立ち読みしていた。
さすがにずっとこっちを見ていたわけでは無かったけどなかなかの時間監視されていたような気がする。
制服に着替えて店を出ると当たり前の様に青峰くんが待っていた。
「お疲れ」
「お、お疲れ様」
「まっすぐ帰んの?」
「うん、そのつもり…今日部活は?」
「出た。最初の1時間くらいな」
「少なっ!」
「帰んぞ」
「っわ!分かったから、いつも引っ張るの止めてよ」
「うっせ」
目に見えて不機嫌な青峰くん。
何も話さないものだから酷く居心地が悪い。
とりあえず先輩の言ってた事、伝えてみようか。
「…あお」
「おい名前」
…出鼻挫かれた。
「何?」
「お前のバイト先の男」
「え、あ、先輩?」
「おう。そいつ」
「先輩がどうかした?」
「アイツ、お前の事好きなんじゃね?」
「ぶーっ!!」
出鼻挫かれたと思ったけど本題だった。
「はぁ?何噴いてんだよお前」
「いやいやいやいや」
「なんだよ」
「それ無いから」
「あ?なんで言い切れんだよ」
「だって先輩彼女持ちだからね」
「…それマジか」
「マジマジ。かわいい彼女がいるの、もうラブラブ」
「へえ」
「だから私なんか眼中に無いって」
「それよ…お前がアイツの事好きって事かよ」
「はぁ!?ちっがーう!!」
「ホントかよ」
「なんなの!?さっきからなんなの!?私と先輩をどうしたいの!?」
「うるせーなぁ。どうもしたくねーから聞いてんだろ」
「ああそう!ソウデスカ!どうもしたくない?ん?どうも…したくない?」
「…ま、いーわ」
「は」
「なんともねーならそれで」
「…」
「ほら歩け。とっとと帰んぞ」
「…」
固まって止まってしまった私の手を引いてまた歩き出す青峰くん。
ちょっと待て。
どうもしたくないって。
何ともないならそれでいいって。
『名前ちゃん大好きがビシバシ伝わって来るよ』
先輩の言葉を思い出した。
けど分からない。
小学生染みた嫉妬みたいなものは感じるしそういう時の物言いは凄くストレートだけど。
何か『好き』とかそういう事をちゃんと言われたわけでもないし。
言って来る気配も無いし。
なんだろう私って。
好きなアイドルの雑誌をくれたただのイイ人、みたいな?
それだけ、か。
って私何ガッカリしてるの!?
それならそれでいいじゃないか。
でもそんなに嫉妬するくらいなら、特別な言葉で伝えてくれればいいのにだなんてそんな事…1ミリも思ってなんか…


ストレートな嫉妬が心地いい
そう感じてたのも事実

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