REAL | ナノ

25

1から10まで説明して。
…やっぱりいい、窒息しそう。


『好きでもない女に…こんな事、しねえよ』
黄瀬のその言葉に、息を切らせながらも驚きと喜びの感情に支配された自分の心を恥じた。
私、なんでこんなに喜んでるの。
ドキドキと煩い心臓はその度合いを示しているかの様で余計に恥ずかしい。
ふと黄瀬の手が頬に触れてビクリと反応する。
恐る恐る顔を見上げれば情けない顔の黄瀬が居た。
「何なんスか、その可愛い顔」
「!」
「誘ってんの?」
「は!?」
「ちなみに俺、好きでもない女に童貞捧げる程だらしなくないから」
「!!」
「でももう1回味知っちゃったし…他を味見する気も、あの1回で済ます気もないから」
「な!ば、バカじゃないの!?」
「バカかもしんないスね」
「え」
「有り得ないくらい自分に全然靡かない、ツン10割の女の子なんか好きになっちゃって…」
「き、黄瀬…」
「名前」
「!!」
「俺は何考えてんのかちゃんと言ったんだから、アンタの頭ン中も教えて」
そう言って少し屈む様にして私を見る黄瀬の瞳は不安定に揺れていた。
私の頭の中、そんなのもう自分でも痛いくらいに理解してる。
だけど素直になれない私はこんな事しか言えなかった。
「残念ながら私、今ツン2割くらいになってるんだけど…黄瀬は靡かない女の子が好きなんだよね?」
「え、2割って…」
「靡かない女の子が好きなら…、私はもう対象外。残念だね」
可愛くない。
こんな回りくどい言い方して。
心底可愛くないと思う。
だけどそんな面倒な私を捕まえてくれる手がそこには在った。
「2〜10割までの増減なら、受け付けるッスよ」
「え…」
「名前限定で」
私に向けられた真っ直ぐな純粋な笑顔に、ボンと音が鳴りそうな程の勢いで赤面した。
それを見た黄瀬がほんの少し頬を染めるものだから私の顔の熱は上がる一方だ。
「もう、ホント…意味分かんない」
「分かんないなら、俺の頭ン中もう1回説明しようか…1から、分かるまでじっくり」
「!いい!いらない!!」
「そうッスか?ちゃんと『好き』って言わせたいとか、キスして俺しか考えられない様にしたいとか消えないくらい痕つけたいとか、今すぐ襲いたいとか色々考えてるんスけど?」
「は!?」
私を抱き寄せる腕にだんだんと力が入り、それに比例する様に身の危険を感じる。
少しでも離れようと両手で黄瀬の腕を掴んで押したけどびくともしなかった。
「逃がさない」
「ちょっと、待って」
「待たない」
「ちょ!誰かッ!んんッ!」
ヤバイ!と思った時には口を塞がれていた。
だけどそれは拘束する様な乱暴なものじゃなくて…あまりの甘過ぎるそれに、黄瀬の言う通り私の頭の中は目の前のコイツで一杯になっていく様だ。
強張っていた私の体はだんだんと力が抜けて、黄瀬を押し戻そうとしていた手はいつの間にか黄瀬の濡れたユニホームを掴んでいた。
私の中の妙なプライドは消えた。
それに気付いたのか黄瀬がまた私を抱き締める腕に力を込める。
そして、そっと唇が離れてホッとしたのも束の間…


「アンタだけが知ってればいいよ、ホントの俺」


耳元で囁かれた言葉はただ私の熱を上げるだけだった。


私だけが知ってる。
誰も知らない本当の黄瀬。
不本意だけど私はこの男を好きになってしまった。
でもなんだか悔しいから言ってなんかやらない。

END
20140413

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