REAL | ナノ

24

本当のキミと 
本当の私


「汗臭い」
「いい匂いの間違いっしょ?」
「馬鹿なの?制服濡れるんですけど」
「大丈夫、すぐ乾くッス」
「乾くか!無理、離して」
「やだ」
「離して」
「離さない」
私は黄瀬の腕の中に居た。
名前を呼んで返事をしてすぐ目の前に大きな体が迫って、気付けば黄瀬の腕に納まっていたのだ。
汗だくの黄瀬の体が密着して私の制服も水分を含んでしっとりとして来た。
突っ撥ね様とすれば出来たのにしなかったのは、繕っていない黄瀬の笑顔に絆されてしまったから。
認めたくないなんて私のプライドはもうある様でない様な物だった。
自分の腕をこの大きな背中に回さない事でなけなしのプライドを見せつける。
それもいつ限界が来るか怪しい所だ。
只でさえぴったりとくっ付いているっていうのに、更にぎゅっと引き寄せられた。
「アンタに聞きたい事あるんスけど」
「奇遇だね、私も聞きたい事があるよ」
「せーので言う?」
「何このめんどくさい女子みたいなやり取り」
「アンタ女子でしょ」
「あんたは男子でしょ」
「…はぁ。もう、そうじゃなくて…ちゃんと話したいんスよ」
「私は別に話したくは無いけど話さなきゃいけないって思ってたとこ」
「…ホント、アンタって…」

「何考えてんの?」
「黄瀬って何考えてんの?」

2人の声が重なった。
驚いて頭数個分上にある黄瀬の顔を見上げれば、同じ様に驚いた顔をしている。
暫くの沈黙の後、先に仕掛けて来たのは黄瀬だった。
「俺の事…どう、思ってんスか」
「!」
「嫌いだから…避けてんの?」
「…」
「あんな事したから?」
「!!…き、黄瀬こそ…意味、分かんない。突然話した事も無かった私に突っ掛って来て…勝手に暴言吐いて…勝手に、離れてって…かと思えばまたどんどん私の中に踏み込んで来て……あんたこそ、私の事嫌いなんでしょ」
「それ、本気で言ってる?」
「黄瀬の方こそ」
「アンタ頭イカれてんの?」
「は!?黄瀬に言われたくない!」
「アンタこそなんなんだよ!俺の事見下して!他の女みたいに寄って来ないし、ゲスい事吐いたって怖がんねえし!絶対俺には笑わねえし!なのに先輩とはあんな楽しそうにッ!」
「はあ!?先輩は関係ないでしょ!?ていうか私とあんな取り巻き一緒にしないでよね!私はッ…!」
『違う』
そう言おうとして口を噤んだ。
違わないじゃないか。
結局私はコイツの事を…
同じだ、結局他の女の子と。
始まりは違ったとしても結局は…
合わせていた視線をぎこちなく逸らす。
と同時、黄瀬の腕が更に私を引き寄せた。
「!ちょ、何!」
「…一緒にしてねえよ」
「は?」
「他の女とアンタが同じのわけないだろ」
「な、何…」
「ホント、何考えてんスか」
「だからそれはこっちの台詞だって!ッ!?」
「んッ」
突然黄瀬の片手が私の頭を押さえて、ぐっと顔が近付いて…咬み付かれた。
驚いてジタバタしたけど全く意味は無く、更に強く引き寄せられて口を塞がれるだけだった。
激しい始まりの割りに暫く優しく食む様なキスが続いて、私の息がそろそろ限界という所でそっと離される。
そして目を逸らせなくなったその柔らかい唇から紡がれた言葉を耳から聞き入れて…

「好きでもない女に…こんな事、しねえよ」

脳でやっと、理解した。


その乱暴な言葉遣いさえ心地いい。
どうかしてるのは私の方。

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