REAL | ナノ

19

適わないなと思う。
そんな親友が私は大好きなのだけど。


黄瀬の視線から逃れる毎日。
近付いたり話し掛けて来たりという事は無かったけど、その視線が痛かった。
見ないで欲しかった。
あの目に私の真意を見抜かれるようで怖かったから。
黄瀬から逃げる様にして過ごす事で、私は思いの外体力精神力を削られていたらしい。
注意力散漫になっていた私は少し離れた所にいた悠に駆け寄ろうとして段差に気付かずずっこけた。
痛い痛い痛い。
しかもこの年になって鼻の頭を擦り剥くとか笑えない。
悠には指差して爆笑されたけど。
「随分やんちゃな女子高生だわ」
「まあね。こんな女子高生何処探してもいないでしょ?」
「うむ。膝、手のひら、鼻の頭、小学生でもなかなかお目に掛かれないよね」
「うん、何も言い返せない」
「はい!これでオッケっと!」
「いだっ…ありがと、悠」
膝に絆創膏を貼った後バシッと叩かれた。
地味に痛い。
立ち上がろうとしたら何故か頭を鷲掴みにされる。
見上げた先にあったのは困った表情をした悠の顔だった。
「名前…最近ボーっとし過ぎ」
「はい、すいませんです」
「話してくれる気になった?」
「え…」
「それとも私じゃ頼りない?」
「ゆ、悠」
「私が何も気付いてないとでも思ったか、このバカチンが」
「え?」
「何があったの?あのキンキラアイドルと」
「!」

私はついに悠に全部をぶちまけた。
溜め込んで来た物を吐き出す様に。
悠は黄瀬が嫌いだ。
私が『嫌いだった』様に。
話した後で嫌われるかもしれない、もう話もしてくれないかもしれないと思った。
だけどそれは私の杞憂に終わる。
親友の器の大きさを舐めていたらしい。
そんな事を考えていた事に激怒された。
「怒ってるけどね!私はそれくらいで友達止める程薄情のつもりないよ」
「悠…ごめん」
「それから勿論あのキンキラにも怒ってるけどさ」
「?…けど?」
「なんか名前があんまり可愛い顔してるから、それに免じてちょっとだけ大目にみてやる事にする」
「か、可愛い!?!?」
「何そんな驚いてんの」
「は!?だ、だって」
「全く、そんな色気漂わせといてとんだ困ったちゃんだわ」
「色気!?ちょっと悠何言ってるの!」
「あー、なんかキンキラに同情して来たわ」
「益々意味が分からん!」
「自覚を持て、自覚を!今の名前は『恋』してるって事!」
「!!」

自覚なんてとっくに持ってた。
ただその事を初めて自分以外の誰かに指摘された事で、隠し様もない確たる事実となってしまった。


私に優しい笑顔を向ける親友。
彼女の瞳には女々しい自分が映り込んでいた。

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