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人間って怖い。
だってあんなの、笑顔の仮面を被った詐欺師だ。


ある晴れた休日。
部活も無所属、彼氏もなし。
そんな特に予定なしの私はとりあえず外に繰り出した。
1人の時間は割と好きだ。
あてもなく街中を歩いていると少し離れた所に人だかりを見つける。
そこには派手目の女の子数名。
その中心には黄色い頭。
…黄瀬涼太。
一応同じクラス…話した事なんか無いけど。
彼はクラス皆から、いや全校生徒むしろ彼を知る全ての人から好かれ、憧れられ、騒がれる存在と言っても過言ではない。
私は興味ないけど。
バスケ部でなんだかスゴイ人なんだって話は聞いてるけど、見に行こうとも思わないしそういう煩い所は苦手だ。
どうせ黄色い悲鳴が飛び交ってるに決まってる。
ほら、今も。
いつものように群がる女の子にキラキラの笑顔を向けてる。
それを見た女の子たちは最早倒れそうな勢いだ。
あんなにニコニコして疲れないのかと思う。
私には無理。
別に気取ってるとかそういうんじゃなくて、あんな風に無駄に笑顔を振り撒くのは苦手だ。
仲のいい友達と気負わず過ごして、楽しい事をして、楽しいと思った時に笑えればそれでいい。
だから苦手。
ただ興味がないとは言ったけど、『苦手対象』として警戒の目で見てはいる。
まあ話す事も無いわけだから特に警戒する事もないんだけど、視覚的に軽い拒否反応を示すくらい。

一頻り騒いで満足したのか帰って行く女の子たち。
黄色の男はその女の子たちにもう一度ニッコリと微笑んで手を振りゆっくりと踵を返す。
その横顔は…
凍り付く様に冷たく恐ろしい。
思わず息を呑んだ。
眉間に皺が寄って眉は吊り上がり、目は据わってこれでもかと苛立ちを表現してる。
背筋が凍るほどに冷たいその鋭い目がゆっくりと動きを見せて…
立ち竦む私の姿を捉えた。


ヒュッと自分の喉が鳴る音が響いた。
関わっちゃいけない。

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