REAL | ナノ

12

運動部と帰宅部って事考えて。
その前にこの状況はなんだっていうの。


黄瀬に手を引かれてやって来たのは滅多に人通りの無い階段の踊り場。
肩で息をする私とは対称的に、黄瀬は息一つ乱さず真顔で私を見ている。
その顔、超怖いから。
しかも手首痛いんですけど。
「なんなんスか」
「いや、そっちが何なのって話でしょ」
「あんたホント、なんなんスか」
「…」
「…」
意味が分からんと黄瀬を睨み付けると、その瞳が戸惑う様に揺れた。
もっと意味が分からない。
強いんだか弱いんだか、何がしたいんだかサッパリだ。
「笠松先輩は無理ッスよ」
「え?」
「先輩はあんたみたいな人に興味ないって事」
「はい?」
「先輩を唆そうとしたって無理」
「ん?」
「なんスか、その間抜け面は」
「…全っ然意味分かんないんですけど」
「馬鹿なんスか?」
「いや、そっちがね」
若干白い目で黄瀬を見てやると、何故かキッと睨みを効かせて声を荒げた。
「あんた笠松先輩好きなんだろ?って事!」
「………」
「図星ッスか」
「…いやいやいやいや、それキミでしょ」
「はぁ?」
「え、笠松先輩と私が話してるから私に嫉妬したわけ?」
「…は?」
「笠松先輩に随分懐いてるね」
「え」
「違うの?」
「…?」
「え、何その顔」
眉間に皺を寄せて黙った黄瀬。
ていうかなんで首傾げてる。
もう勘弁して下さい。
めんどくさ過ぎる。
とりあえずこんなくだらない話に付き合ってられるかと手を振り払う。
「ちょ、まだ話はっ」
「私は話す事なんかないよ」
「笠松先輩は皆にあんな風に優しいんスから!勘違いしない方がいいッスよ」
「してないから!めんどくさ!!」
「なっ!」
「少なくとも黄瀬より優しくていい人で面倒見がいいって事はよく分かってるつもり」
「は?ちょ、待って!」
「誰が待つか!あ、悠〜!」
かなり遠くだけど悠の姿を捉えて大声で名を呼べば、こっちを向いた彼女の顔はあからさまに引き攣った。
さすがに気が引けたのかそれ以上黄瀬が何か言って来る事は無かった。
ホッとして悠に駆け寄る。
「ちょっと名前あんた何してんの」
「顔怖い、まあ落ち着いて」
「これが落ち着いて居られるか!あのチャラ男と何してたの」
「話だよ、話!しかも意味不明なね」
「黄瀬と名前が一体なんの話すんのさ」
「大好きな先輩が私と話してたのが気に入らないらしいよ」
「はぁ?」
「ほら、バスケ部に笠松先輩って居るでしょ?」
「ああ、あのしっかりしてそうな人ね」
「皆に優しいんだから勘違いはするな、だって」
「…めっっっんどくさ!」
「溜めたね」
「しかしまあよく名前に絡んでくるわ」
「意味不明にね」
「余程あんたが嫌いか…はたまたその逆、か」
「ちょっとちょっと、有り得ない事言わない」
「言ってみただけだよ。うん、有り得んわな」


振り返ったらそこに既に姿はなく。
私には変なモヤモヤだけが残った。

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