思わぬ事態に注意、か。
別に占いなんて信じてないけど。
「痛い、占い怖い」
「あんたおは朝信者だった?」
「たまたま見たんだよ。今日だけたまたまね」
「そんなもんだよねぇ、どんまい」
「思わぬ事態ってコレか…」
悠に付き添って貰って保健室。
保健室にあまりいい思い出は無い。
ついさっき、転んで膝を打ち付けて痣を作って来た。
階段の上りで前を歩いていた女の子がペンを落として、それを上手い事空中キャッチしてかっこよく渡してあげるはずだったのだけど。
体勢を崩してズルッと足を滑らせ、階段に両膝を強打した。
脛じゃないだけまだ良かったかもしれない。
先生に湿布を貼って貰って保健室を出た。
「悠、ありがと」
「うむ。以後気を付けるように」
「了解」
そんな会話をしながら廊下を歩いていると、前方から黄色い男が向かって来る。
悠の眉間に皺が寄った。
あ、それ私がやる予定だったのに。
「苗字さん…膝、どうしたんスか?」
「ちょっとね」
「…誰かに何かされたとか」
「はい?私人に恨まれる様な事してませんけど」
「いや、違うならいいんス」
「名前、行くよ」
「うん」
変な黄瀬。
歩き出してからチラリと振り返ると立ち止まってこっちを見ている黄瀬と目が合った。
なんなんだ、一体。
下校時間になった。
私は今、黄瀬を射殺すかの勢いで睨み付けている。
何故かってそれは
「…喧嘩売ってる?」
「まさか!」
靴箱からローファーを出してポイと地面に放ったら、上手く放れずに片足が遠くに飛んでしまった。
何が困るって膝が痛いのだ。
痛いのを堪えながら片足立ちでもう一方を取りに行こうとした所で黄瀬が現れた。
そしてコイツは私のローファーを拾って、あろう事か更に遠くに置いたのだ。
「なんのつもりですか」
「部活」
「は?」
「部活行くから早く」
「早く?」
「上履き履いて」
「何故?」
「苗字さんも行くから」
「…は」
何を言ってるのこの人。
ポカンとしていると、笠松先輩がやって来た。
救いの神様。
「よお、苗字!もう部活始まるから早くな」
「…え?」
「今日は黄瀬の応援に来るんだろ?今日練習試合って知ってたか?このバカもきっとやる気出るだろうし、俺からも頼むわ」
「せ、先輩?」
「って事で、行くッスよ?苗字さん?」
爽やか笑顔の先輩と腹黒の黄色頭に連行された。
思わぬ事態って、こっちか。
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