企画 | ナノ

20000打



「おい泪…マジで、コレ乗んのか?」
「え、うん。マジ!」



大輝の進路も無事決まってやっと落ち着いたある日、私たちは有名な某遊園地に来ていた。
夢の国っていうやつだ。
デートだ、デート!
こんな風に遊ぶ為に2人でお出掛けするのは実は初めてなので嬉しい。
向こうでもこっちに来てからも『デート』らしい事なんてした事なかったから。
約1名文句垂れてるのが居るけど。
「マジかよ…こんなツボに入って座ってるだけの何が楽しいんだよ…」
「こら!夢の国だぞ!夢を壊すな!」
「だいたいさっきのもなんなんだよ…気味ワリィ人形がひたすら歌って踊ってるだけだったじゃねーか」
「文句言わない!もう!せっかく来たんだからもっと楽しくやろうよ!」
「だー、るせーなぁ。ったく…さっさとコレ乗って違うとこ行こうぜ」
「違うとこって?」
「もっと楽しーのあんだろ!スペースなんちゃらとか、スプラッシュなんちゃらとか、はえーヤツだよ」
「なんだ、大輝も楽しみにしてるヤツあるんじゃん」
「楽しめっつったのおめーだろうが!
「あはは!」
なんだかんだ言って乗れば楽しんでるくせに、そう思われるのは不服らしい。
繋がれた手をぎゅっと握ってブンブン振れば、ジト目を向けられた後力一杯ぎゅうううううと握り返された。
めちゃくちゃ痛い。
何個かアトラクションをやっつけて歩いていると、ちょっと離れた所にここの看板キャラクターを発見!
テンション上がる!
大輝の手をぐいぐい引っ張って駆け寄った。
「おい!引っ張んなコラ!」
「早く早く!行こう!」
「は!?ま、まさかお前」
「すいませーん!写真お願いします!」
「マジかよっ!!!」
マジだ。
可愛い可愛いネズミちゃんと一緒に写真を撮ってもらうのだ。
快くオッケーを貰ってネズミちゃんにぎゅっとしがみ付いて待っていると、大きな頭の向こう側、つまり逆サイドでしかめっ面の大輝と目が合った。
凄い怖いから、子供見たら絶対泣いちゃうからその顔止めようか!
一度睨んだ後ふいと顔を逸らされたと思ったら、何を思ったか今度は私の目の前に立った。
「大輝、これじゃ写真撮れない」
「…」
そして彼の取った行動は…
バシッ!バシバシッ!!
「ちょ!大輝!!えええっ!?」
「てめえ、退けコラ!俺がここだ!」
「ええっ!?」
突然、私がしがみ付いていたネズミちゃんの腕にチョップし始めた大輝。
私とネズミちゃんを引き剥がすと、間にズイと入り込んだ。
続いて私の腰を引き寄せた後、ネズミちゃんの頭をぐわしと鷲掴んで一言。
「ちゃっかり俺専用のおっぱい触ってんじゃねーよ、このネズミ」
ネズミちゃん明らかに一瞬硬直した。
私は白目だ。
な、何言ってんのこの人!!
苦笑いのスタッフさんの掛け声と共にシャッターが切られる。
撮れた写真はなんともシュールな出来栄えとなった。
主役が端っこで頭鷲掴みされてるなんて、こんな写真を撮ったのは後にも先にも私たちだけだろう。
ネズミちゃん項垂れてた。
「バッカじゃないの!?バカだよね!?いや、バカなんだよ!!」
「るせーな泪。いつまでもギャンギャン吠えてんじゃねーよ」
「怒るわ!周りに聞こえなくてホント良かった!ネズミちゃんには聞こえちゃったけどね!!」
「中身人間だろーが。ちいせえ男が入ってたらどーすんだよ」
「知らんわ!!うあああああ超恥ずかしいこの人!!」
「うっせ」
そんな言い合いをしながらも手はぎゅっと握られている。
なんだか余計に恥ずかしくなって手を振り解こうとすれば、今度は腰を引き寄せられた。
歩きにくいし、もっと恥ずかしい!!
「ちょっと、大輝」
「あ?んだよ」
「は、恥ずかしいんですけど」
「楽しめっつったのお前だろ。俺は楽しんでるだけだけどな」
「なんか意味違う」
「腹減った。飯にしよーぜ」
「うー…うん」
あー、上手い事丸め込まれた。

食べて歩いて遊び倒した私たちは、もうすぐ始まる夜のパレード待ちの人混みから離れた場所に居た。
ここからじゃちゃんと見えないけど、ちょっと静かな所から見るのも綺麗でいいと思う。
「っ寒い!」
「あ?こっち来い」
何これ恥ずかしい。
後ろから包む様に抱き込まれて、頭のてっぺんに顎を乗せられた。
ただのバカップルじゃないか。
「あ!始まった!!」
「おー」
「でもここからじゃあんま見えないかな〜。ま、雰囲気だけでもいっか」
「お前小せーからな」
「女子じゃ普通だからね。大輝がでか過ぎるんだよ!」
「んじゃ。ほら、よっ」
「ちょ!うっわ!高い!!」
急に体が宙に浮いて、驚いて思わず大輝にしがみ付く。
片腕にお尻を乗せて抱える様にして持ち上げてくれたのだ。
おかげで私はただでさえ高い大輝より頭一つ分飛び出て、身長2メートル超えだ。
「見えんだろ?」
「うん!凄い!高っ!!」
「ぶはっ!子供みてー」
「いいじゃん今日くらい!うわ来た!超可愛い!!見て見て!」
「うお!あんま動くなって」
「あはは!」
キラキラと光るライトや装飾を特等席で眺める。
暫く黙って夢の世界を堪能した。
大輝も何も言わずに光を見つめてる。
不意に私を支える大輝の腕に力が入った。
チラリと顔を見たけど、まっすぐ前を見つめていて視線は交わらない。
そのまま大輝が話し出した。
「泪」
「ん?」
「お前…向こうに帰りたいとか、思わねーの?」
「え?」
「なんつーか、俺は別に向こうに居たままだって良かったけどよ。お前は…」
「ふふ、何言ってんの?」
「…んだよ」
「思わないよ、全然」
「…」
「大輝が居て、奏が居て皆が居て…他に何も望む事なんか無いよ」
「…あっそ」
「うん」
パレードを見つめる大輝の口元が少しだけ上がった様な気がする。
肩に置いた手に力を込めればゆっくりと大輝がこっちを向いて、そっと私を下ろした。
「泪」
「ん?」
大輝の大きな手が私の両腕を掴んで…
色とりどりの光を受けながらゆっくりとその顔が近付く。
そのまま大輝に身を委ねて目を閉じた。
あー。
私今、凄く幸せだ。
大輝もそんな風に感じてくれてればいいなと思う。
大好きだよ、大輝。





「私は大輝が居れば何処だっていい」
「…何お前、ここで襲われてーの?」
「え、は?ぎゃっ!!」
END


20000打ありがとうございます!
お楽しみいただけましたでしょうか?
これからも
 どうぞよろしくお願いいたします!

管理人 泪
20131109

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