unstoppable | ナノ

第5Q

「青峰!友達来るから起きなさいよ!」
「んあ?…おお、そいつ巨乳、いってぇ!!」


ピンポーン。
来た来た、奏だ。
青峰のやつまだ起きて来ない。
玄関でビックリ!を予定してたけどまだいっか。
とりあえず上がってもらおう。
「今開けるー!」
ガチャ…
「やっほー、お邪魔」
「いらっしゃい!どぞどぞ」
「あ、え、待って名前!まだ閉めな…」
「え?」
パタン…
「あ」
「え?何、どしたの?荷物?」
奏を迎え入れて玄関を普通に閉めたのだけど、様子がおかしい。
あ、買ってきた物がまだ外って事か!と思ってまた開けようとしたその時。
コンコン
『すいません、開けて下さい』
………。
…?
「奏?」
「あ、あはは。とりあえず、玄関開けて」
言われるままに玄関を開けると…
「!?!?!?」
「こんばんは。夜分遅くに、すみません」
水色の彼が、佇んでいた…
「くくくくく、黒子っちぃいいい!?」
「はい、黒子テツヤです。はじめまして、名前さん。驚かせてすみません」
「って事なんだわ。話はまぁ夕飯食べながらさ」
「…眩暈がしてきたよ、奏」
「うん、分かるよ」
まさか、奏の所に黒子が現れてたなんて…。
私が奏を驚かせるはずが!
じゃなくて、さっき玄関開けた時は見えなかったけどやっぱアレって
影、薄いんだ…
実証された、なんか凄い。

「その辺適当に座ってー」
「うん、ありがと」
「失礼します」
「どぞどぞ。…奏、私も話あるんだ」
「えー何?ついに3次元の彼氏が出来たとか!」
「いやいやいや、それ無いから」
『名前ー!!誰か来てんのかー?』
「え!ちょっと名前!!男!?」
「………なんてタイミングだよ、おい」
「名前さん、あの…今の声って」
「あはは、ちょっと、待っててね」

「…青峰くん」
「テ、テツ!?」
「ぶっは、青峰だと!」
「期待通りの反応をありがとう奏」
タイミングがいいのか悪いのか、寝室から出て来た青峰。
黒子くんとの再会にちょっと、いや、結構嬉しそうだ。
きっとホッとしているんだろう。
帝光時代に見せていたような無邪気な顔で話している。
表情の乏しい印象のある黒子くんも嬉しそうだ。
漫画の1頁を見ているようで微笑ましい。
奏が持ってきてくれた夕飯を広げて突きながら、私たち2人は現状を整理していた。
青峰と黒子くんは未だ話が尽きないようだ。
「名前。何がどうなってるんだろうね、この状況」
「私にもさっぱりだよ。青峰は公園で拾ったよ」
「ぶは!拾ったって!黒子っちはね、昨日帰ったら家の前でポツンて立ってたよ」
「なんか可愛いじゃんか!」
「いいでしょ?ところでコレってさ、所謂トリップとかいうやつだよね」
「だろうね」
「って事はさ、やっぱり何れは向こうに帰っちゃうって事だよね」
「…そう、か…そうだよね」
………
私、今何を思った?
青峰が元の世界に帰る。
今、ちょっとだけ寂しいかもって…
いやいや、何考えてんの。
態度でかいし、口悪いし、
真ちゃんが来れば良かったのにって思ってるのにさ。
まあ確かに弟でも出来たみたいで新鮮って思う事もあるかもしれないけどでも
別に青峰が居なくなった所で…
「名前、顔が百面相」
「は!し、失礼だな!元からこんな顔だ!」
「あはは、まあいいけど。帰るまで、ちゃんと面倒みてあげるんでしょ?私は黒子くんと擬似新婚ライフを送るつもりだけど〜」
「奏はいいよね〜。お気に入りの黒子っちと暮らせてさ。ま、拾ったからには最後まで預かるけどさ」
「そうしてあげな。…彼、結構無邪気に笑うんだね、楽しそう」
「…本当だ。安心したんじゃないかな。1人じゃないって分かって」
「だよね。しかし、どうしてこうなったって感じだね〜」
「全くだよ。…どれくらいここに居るんだろ」
「え、なになに?離れるのが寂しくなっちゃってるとか?」
「ちょ!有り得ないから!青峰だよ!?あんなバカ別になんとも「おいコラてめえ」あ」
「俺がなんだって?名前ちゃんよ」
「ぎゃあぁぁああああッ!!」

「黒子くん、あの2人楽しそうだね」
「はい。青峰くんが出会ったのが名前さんで良かったと思います」
「そう?」
「あんなに、何かに興味を持った様な顔をしている青峰くんを見るのは久しぶりです」
「…獲物を狙ってる目とも言うかな」
「(ニコ)名前さんがきっと青峰くんを導いてくれる、そんな気がします」
「ふぅん?黒子くんは?私なんかのとこに来ちゃってさ、「僕も」」
「僕も、奏さんと出会えて良かったと思ってます。突然現れた僕に優しくしてくれて、居候までさせてもらって、本当に感謝しています。ありがとうございます」
「なーに改まっちゃって!なんか照れるじゃん!ま、そんな黒子くんが好きなんだけど!」
「!?す、好き…ですか」
「ふふ、私も黒子くんが来てくれて良かった」

アホ峰に捕まり、リビングのソファで後ろから羽交い絞めにされながら、キッチンでほんわかムードで話している奏と黒子くんを見つめた。
「なんだよ、急に大人しくなりやがって。降参か?」
「奏…なんか、幸せそう」
「…おめーは」
「え?」
「おめーはどうなんだよ。…ああ、緑間が良かったんだったな」
「うん、真ちゃん大好きだからね」
「!おま、そこはちょっとは否定する所だろーがよ!」
「あっはは。嘘嘘。…あんたが居るのも悪くないよ」
「ふん、そーかよ」
不思議。
なんでこんな言葉が出て来たのか。
嘘をついたわけでもない。
同情して出て来た言葉でもない。
自分でもよく分からない。
ただ、つっけんどんだけどホッとしたような青峰の声を聞いて、私も何故かちょっとだけホッとした。
それだけ。


「ちょっと!いつまで後ろにくっ付いてんの!」
「あー、いいじゃねぇか。ケチケチすんなよ」

prev / next

[ back to top ]

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -