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第33Q

「名前、あんた何そんなげっそりしてんの」
「お願い、追求しないで」


私は今、奏と芝生に寝転がりながらおしゃべりをしている。
障害物がなく風が吹いてくるので凄く気持ちいいい。
ちなみに大輝とテツくんはすぐ脇のストバスで元気に走り回っている。
アイツの体力半端ない、怖い。
昨晩の事を思い出してボッと顔が赤くなった。
「名前、幸せそうだね」
「か、奏こそ」
「私たち、いつまで幸せで居られるかな」
「……分からない」
「だよね」
「いつか、やっぱ帰っちゃうのかな」
「…だよね」
「でもさ」
「ん?」
「今を、楽しまなきゃだよね」
「名前?」
「んー。アイツ馬鹿のくせにたまに的を得た事言うんだよねー」
「青峰っち?」
「そ」
『いつだか分からねー先の事でウジウジしてたらよ、時間が勿体ねーと思わねぇ?好きなら好きで自分のしたいようにがつがつ行けばいーんだよ、バァカ』
『もしお前に触れる時間が限られてるならよ…1秒だって勿体ねーだろ』
いかにも大輝らしいけど、その言葉は少なからず私に影響を与えてる。
「へぇ、青峰っちそんな事言ってたんだ」
「テツくんが奏の事で悩んでる時にね」
「え!テツが?」
「むふふ」
「何それ知らない」
「ま、結果オーライって事で今が幸せならいいんじゃない?」
「うわ、名前に諭されるとなんか腹立つ!」
「ええっ!」
「あはは!うっそ!でもそうかもしれないね…見てよ、あの2人」
「ん」
秦に言われた通り首を動かして横を向く。
フェンスの向こうで走り回る2人が見えた。
「めっちゃくちゃ楽しそうにバスケしてるよね」
「うん、いいね…あの顔」
「真ちゃん真ちゃん言ってた子がまさかこんな事になるなんてねー」
「自分が一番驚いてますよ」
「あ、こっち見た」
「ホントだ」
「でもってこっち来るよ?」
「ホントだね」
「結構なスピードで来てるよね」
「ホントだよね」
「あはは!青峰っちあんたに向かって突進して来るよ、ぶはは!」
「えー、暑苦しい、なんなの」
「名前!」
「え?は?」
「ぶは!ちょ、テツ!青峰っちどうしたの」
「あの、ええと…その…」
「名前てめえ!」
「ぎゃ!ちょっと!何!?」
芝生に寝転んだ私の上には、大輝。
しかもちょっとご立腹のようだ。
意味が分からない。
「お前なんてかっこしてんだよ!」
「は?芝生に寝そべってるだけですけど」
「だけじゃねーよ!パンツ見えてんだよバカヤロ」
「えええええっ!?!?!?ああ!!今日スカート!!!」
「あっははははは!名前!マジだ!あははは!」
「ちょっと!奏!!笑いごとじゃない!!」
「風で捲れて見えてんだよ!!その辺の男にサービスしてんじゃねえ!!」
「あ、青峰くん、わざとじゃないんですから…」
「ああ?じゃあテツは奏さんがこうでもいいのか?」
「それは嫌です」
「テツくん即答ー!?」
「やーん、テツちょうかわいい!!」
「その辺うろついてる野郎に見せつけとかねーとな」
「え、…大輝くん。ちょっと一旦私から降りようか」
「ああ?」
「え、なんで顔近づけてくるのかなあ」
「あ?黙ってねえと噛み付くぞ」
「は!?ん!?!?!?」
「きゃー!テツ!あっち行こう!」
「ああああああ青峰くんっ」
遠ざかる奏とテツくん。
私はと言えば…
猛獣に噛み付かれて、芝生以外何も無いこの場所で公開処刑中だ。
チラチラとこちらを見て来る通行人が視界に入って一気に顔に熱が集まる。
「んんっ!!ん!ん!」
「んっは…ん」
「ん!!!」
やっとの思いで唇を離せば、したり顔の大輝。
私を見下ろすその顔は楽しくて仕方ないと言った表情だ。
ああ、この顔を見ると不安なんて吹き飛ぶ。
ぷっと吹き出すと怪訝そうな顔をされた。
「あ?何お仕置きされて笑ってんだよ、Mか?」
「ふふ、幸せだって思ったんだよ」
「は!何恥ずかしい事言ってんだ」
「こんなとこでキスしといてよく言うな!」
「まーたどうせつまんねー事考えたんだろ」
「べっつにー」
大輝もゴロリと私の横に寝転がった。
ああ、重かった…
2人して、広くて綺麗な澄み渡った青空を見つめる。
「分かりやすいやつ。ま、俺がそんな事全部ぶっ潰して忘れさせてやっけど?」
「…それもなんか恥ずかしいと思う」
「るせー」
「あーあ、私、真ちゃんが好きだったのになあ」
「はっ!俺だってマイちゃんが好きだったぜ?」
「だった、んだよねー」
「だった、な」
「でもなんでか今は、こんな乱暴で粗雑で口悪くてドスケベな男が…好きなんだよねー」
「俺もだな。頑固だし口煩せえし凶暴だし貧乳だし…なんでこんな女が好きなんだか」
「はぁ…なんかこんな空見上げてると、大輝の世界とこっちの世界、繋がってるんじゃないかって思っちゃうよね」
「まあな。案外、繋がってんじゃねーの?そのうちその辺にドカンと桐皇が建ってたりな」
「あはは!真ちゃんが『名前、迎えに来たのだよ』なんて言って来たりしてー!やだー」
「俺が速攻ぶっ殺すけどな」
「うん、本気で怖いから止めようか」
「…名前」
「ん?」
「俺から離れんな」
「…大輝」
「俺が、しょうがねーからお前と一緒に居てやるからよ」
「ぷっ、それはどうも」
「はっ!もっと感謝しろよっ、んっ」
「んん!?っちょ!こらっ!!待てヘンタイ!!」
ちゅっとキスをして走り去る大輝を追い掛ける。
その先ではテツくんと奏が笑いながらこっちを見てる。
こんな幸せがずっと続けばいい。
いや、こうありたいと願う限り続いてくれるかもしれない。
そう願って私たちはこれからも笑い続ける。
止まる事なんてしない。
止まる事なんて知らない。


「大輝、好きだよ」
「ばぁか、俺は愛してんだよ」
END

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