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第26Q

「ほれ、早くしろよ」
「ちょっと!目開けないでってば!」


「目ぇ閉じてんのにお前がなかなかしねーからだろ」
「しょうがないでしょ!は、早く!ちゃんと目瞑って!」
「ほれ」
「う」
先程から何をしてるかと言うと、
大輝が『お前からちゅーしたら今日はいい子に寝てやるよ』と言い出したので、現在私が悪戦苦闘中というわけだ。
目を閉じててとは言ったものの、いざ目の前にするとドキドキしちゃって…
っていい年こいて純情かッ!とか突っ込まないで欲しい。
だって無駄にイケメンなんだ。
大輝は黒バスじゃ怖い顔で有名だけど、他があまりにも群を抜いてイケメン過ぎるだけで…大輝だって十分、その…かっこいいのだ。
さっきまでは病み上がりだからこの辺で我慢してやるとか言ってたのに、いきなり『あー、やべ。やっぱムラムラする』って…やっぱ駄目だコイツは。万年発情期なんだ。
って事で、そろそろ覚悟を決めないと。
「くくっ、あっはは!んだよその顔はよ」
「な!人が一生懸命やろうとしてんのに笑うとか最悪!!」
百面相していた私をこっそり薄目で見ていたのか大爆笑された。
酷い。笑うとかホント酷い。
腹が立った私は大輝に背を向けて不貞寝を決め込もうとした。けどまあ、そんなの許されるはずもなくすぐに後ろから抱き締められる事になるんだけど。
「そんくらいで怒んなよ。ほれ、こっち向け」
「嫌。ちょっと、触んないで、もう寝る」
「名前」
「…」
「…名前」
「…」
「名前…こっち向けって」
ズルイと思う。
いくら私でもそんなに甘えた声で名前を呼ばれて無視をし続けられるほど冷たくはない。
ゆっくりと振り向けば、いつもの眉を吊り上げた顔ではなく想像以上に切ない表情の大輝が私を見つめていた。
藍の瞳がゆらゆらと揺れていて綺麗。
「大輝」
「っ」
気付けば、吸い寄せられるように唇を合わせていた。
どうせ出来ないと思っていたのか大輝は一瞬戸惑ったみたいだったけど、すぐに主導権を奪った。
今夜だけで何回キスしてるんだろう。
そろそろ唇がふやけるんじゃないかと思う。
今だって熱を持ってて、腫れてるみたいな感覚すらする。
しばらく私の口内を堪能した後、ちゅっと名残惜しそうに唇を離す。
「なーにボーっとしてんだよ」
「…キス、し過ぎ」
「いーだろ。したいからする、当然じゃね?」
「はぁ…あんたらしいよね」
「ああ?褒めてんのか?バカにしてんのか?」
「そういうとこが好きって言ってんの。ほら、もう寝よ!」
「っは!?サラッと恥ずかしい事言ってんじゃねーよ!」
「ふふ、…おやすみ、大輝」
「はぁ…ったくよ。おー、おやすみ」
ベッドサイドの電気を消して、仄かな月明かりだけに照らされる中…
大輝は私を抱え直して髪に顔を埋めた。
大きな体に包まれて安心し、だんだんと眠くなってくる。
やっぱり私、気付かなかっただけ否、気付こうとしなかっただけ、認めようとしなかっただけで…きっとコイツの事がずっと好きだったんだ。
だって今、こんなにも幸せな気持ち。
温かい体温と気持ちに身を任せて、ゆっくりと目を閉じた。


「んふふ、真ちゃん」
「!?……おい、名前」
「んー、んふふ」
「…んのやろ」
あれ、大輝の声がする。
真ちゃんに会ったのは夢だったのかー。
せっかくもう1日休み貰ったんだし、まだ眠いし起きたくないんだけどな。
また抱き枕になってるし。
うーん、ちょっとぎゅうぎゅうし過ぎ…苦しいんだけど。
…ん?
モソッ
「っうひゃッ!!」
「…やっと起きやがった」
「ちょ!大輝!?」
なんかモゾモゾすると思ったらこの変態!
後ろから抱き締めるようにしてまた私の体触りまくっていた…朝っぱらからコイツは。
「起きた!起きたからもう止め!!」
「ああ?お仕置きだお仕置き!お前なんの夢見てたんだよ」
「夢っ?覚えてないよもう」
「嘘つけコラ。さっき『真ちゃん』とか言ってニヤニヤしてたじゃねーかよ」
「ええっ!ニヤニヤ!?(確かに真ちゃんとは言ったかもしれないけど…)」
「はぁ…俺以外の男の夢見てんじゃねーよ」
「それ無理でしょ!何言ってんの!もう離しなさっ、ひゃぁっ!」
「へぇ、ちったぁ可愛げのある声出んじゃねーか」
「そんなんで可愛いって言われても別に嬉しくなんか」
「ほぉ?」
「ね、ちょっとくっ付き過ぎじゃない?」
「ああ?そうでもねーだろ」
「いや、へばり付いてるってくらいくっ付いてるよね」
「いーじゃねーかよ。なんか文句あんのか?」
「だって…お、お尻……当たって、る…」
「おう、勃ってっかんな」
「ッ!?バカァーーーッ!!!!」
「っぐがぁッ!!いって、おま!!鼻!!」
大輝とまた一緒に寝る事になって1日。
これから毎日こんな朝になるのかと思うとちょっと鬱陶しいけど、ちょっと幸せかもなんて思ってたりする。


「しょーがねーだろ!好きな女とくっ付いてりゃ勃つもん勃つだろーが」
「止めて!変態!下品!なにそのドヤ顔!!」

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