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第24Q

「うっふっふっふ〜」
「か、奏様。その厭らしい笑い方止めてくださいお願い
「これがニヤニヤせずに居られるか」
「だ、だからお願いしますって」
「人様の家でイチャコラされちゃあねぇ?テツ〜?」
「!!っ…」
「え!何!?テツくん顔真っ赤!」
「す、すみません!声が、その…ちょっとだけ、聞こえてしまって…」
「!!」
「ああ?いーじゃねーか別によ。ちったぁ刺激んなったろ?テツ」
「そういう問題じゃありません!青峰くん、名前さんの事が好きならちゃんと優しくしてあげないと…奪われてしまいますよ」
「こんなヤツ俺くれーしか面倒見れねーだろ」
「青峰くんが1人途方に暮れている間、体調の悪い名前さんを支えてくれていたのはあの夏村さんだと聞きましたけど」
「は!?何言ってんだ、俺はあの男に直接聞いたぞ…!?教えられないって、まさかあのヤロウ」
「名前さんの恩人に失礼です」
「恩人だぁ!?」
「そうそう、ただウザイだけだと思ってたけど案外役に立つんだね〜」
「奏さんまで…」
「…2日間、アイツの家に居たって事かよ」
「やーん!青峰っち口尖らせちゃってかわい〜」
「か、奏!あんま刺激しないでよ!後がめんどくさい!」
「ああ?めんどくせーってあんだよ名前」
「…今回はホントお世話になったんだから、あんま失礼な態度取らないでよ?」
「俺アイツ嫌いなんだよ」
「青峰くん。夏村さんが助けてくれたおかげで名前さんとこうしていられるんですよ」
「だぁー!わぁーってるよ!!くっそ」
暫く2人が大輝を苛めた後、私たちは家に帰る事にした。
奏の家を出てれば、外はもう静かな闇に包まれている。
ぼうっと夜空を眺めていると右手が急に温かくなった。
「…こういうの、嫌いそうなのに」
「うるせーよ。お前こうしてねーと逸れちまいそうだし」
「ふふ」
大輝の大きな手が私の手をすっぽりと包んでいた。すごく温かい。
ぎゅっと握り返せば、目を見開いてこちらを凝視している。
「何?」
「なんでもねーよ。帰るぞ」
「うん」
「ちっ(急に可愛い事してんじゃねーよ)」


「ただいま」
「おー。おかえり」
「ぷっ。なんか可笑しいけど、まいっか」
我が家に着いた。
大輝と私の、2人の家。
2日ぶりに帰った自分の家は何も変わってない。
そういえば…
「大輝…ちゃんと生活出来てた?」
「なんだそりゃ」
「ご飯食べたり、お風呂入ったりさ」
「馬鹿にしてんのかおめーは。テツが居たから何も苦労はしてねーよ」
「あ、やっぱテツくんのおかげなんだ」
「うっせ。おめーの事で気が気じゃなかったっつの」
「…そんな、心配してくれてたんだ」
「っ!ば、バァカ!自惚れんなコラ」
「あはは!さ、ご飯食べよ」
「おー。食って風呂入ってさっさと寝ようぜ」
「うん。コンビニのご飯で悪いけど」
「別に。お前、明日仕事どーすんだ?」
「行かないよ。明日も休み貰ってある。夏村さんの計らいだけど」
「…またアイツかよ」
「そんな邪険にしないでよ。今回ばかりは凄く助かったんだから」
「…アイツに絆されてんじゃねーだろうな」
「まぁ、ちょっと見直しちゃったよね」
「なっ!?」
コンビニのご飯を広げて突きながら、ちょっとだけ大輝を苛めてやった。これくらいいいよね?
恥ずかしいけど、思いが通じてからなんだか凄く大輝が愛しくてしょうがない。
なんてこんな事言ったら気持ち悪がられるかもしれないけど。

食事を済ませたらお風呂だ。
今日は私が一番風呂。
先に入れと言われたので素直に入った。
ゆっくりと湯船に浸かって体を解せば、じわじわと幸せな気持ちが広がっていく様でくすぐったい。
私の事を好きだと言った時の真剣な大輝の顔を思い出して、ドキドキと心臓が暴れ出した。
なんだかこんなの嘘みたいだけど、本当なんだよね。
不思議だな、私は真ちゃんが一番好きなキャラだったのに。
キャラ…
その言葉を思い浮かべてドキリとした。
黒子のバスケのキャラクター、青峰大輝。
私は本気で好きになっちゃいけない人を好きになってしまった。
そしてその人は…こんなヤツ絶対好きになんかならないって思ってた人物。
ホント不思議。

真ちゃん真ちゃんと騒いでいる分ならきっと良かった。
でも私は、実際に一緒に過ごした大輝を本気で好きになった。
同じ気持ちだった事は素直に嬉しい。
だけど、同時に広がるのは不安な気持ちだった。
こんなに本気になって…
いつかサヨナラしなきゃいけない時が来たら…
バタン!!
「!?」
「…なんだ、生きてんじゃねーか」
「な、な、何入って来てんのばかぁッ!!!」
「何回呼んでも返事しねーからだろ」
湯船に浸かって考え事をしていたら随分時間が経ってたらしい。
突然大輝が浴室のドアを開けた。
だけならまだしも…
「だ、だからって!ぎゃっ!!素っ裸でこっち来んなああッ!!」
「るせーよ、風呂場は声響くぞ」
「!!で、出る!私もう出るから!そっち向いて!」
「ああ?いーだろ別に。これから普通に見るようになんだからよ」
「なっ!馬鹿!変態!」
「あー?その変態好きになったの誰だよ」
「ちょっ!」
タオルで体を隠して急いで出ようと背を向けると、がしっと肩を掴まれて引き寄せられた。
そのまま後ろから抱きつかれて、密着した素肌に全身が跳ねる。
「あったけーな」
「だ、大輝…私もう出るってば」
「あー、柔らけー」
「!?人の話聞いてる!?」
「…はぁ。名前」
「ちょ、ちょっと!!大輝!!」
「ん…ちゅぅ」
「!?ちょ、耳、止め…」


「お。……勃った」
「ぎゃッ!!何発情してんのバカーッ!!」

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