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第23Q

「名前!!」
「大…輝」


やっぱり。
この声は大輝。
いつもより一際大きな声。
きっと、絶対、怒ってる…
ドカドカと大股で歩く音が響く。
益々怒っている様に思えて肩が上がる。
どうしよ。
何か言われる?される?
ふと、近くで足が止まる。
ぎゅうっ
「っ!?」
横からタックルするかのような衝撃を受けて、すぐに力いっぱい抱き締められた。
私の気のせいじゃなければ…震えてる?
「大、輝?」
「ばっかやろ…ふざけんなっつの」
「ご、ごめ…」
「勝手に居なくなるんじゃ、ねーよ」
「ごめんなさ「悪かった…」え…」
「だぁから!悪かったって」
「ちょ、ちょっと…なんであんたが謝る」
「カッとなって言い過ぎた。…意地、張り過ぎた。すげー、心配した」
「だ、大輝…っわ!」
横から抱き締めていた大輝が急に私の肩を掴んで向かい合う形になる。
そしてそのままもう一度しっかりと、力強く抱き締められた。
大輝の向こう側で奏が小さく手を振るのが見える。
テツくんと一緒に奥の部屋に消えて行った。
ここには…私と大輝の2人。
「名前」
「大輝、ごめんなさい」
「いい、黙ってろ…ん」
「良くない…あっ、ちょっと」
私の髪に顔を埋め、項に唇を押し当てる大輝。
ちゅ、と音を立てて何度も何度も確かめる様に触れてくる。
ぞくぞくする感覚に体を震わせれば、更に強く抱き締められた。
「名前、…名前」
「っ大輝」
何度も囁かれる名前に、胸がぎゅっと締め付けられる。
ああ、私…コイツの事…
「名前、…キス、してー」
「!!…い、今いっぱい、してる」
「ちげーよ。そういうんじゃねー」
「ま、待って。あんた何言って…」
ぎゅっと密着していた大輝が少しだけ距離を取る。
鋭い藍の瞳が揺れながら私を捉えた。
あまりに真剣な瞳に逸らす事も出来ない。
「名前」
「!」
ゆっくりと顔が近付き、唇が今にも触れそうな寸前で止まる。
そして…
「っ好きだ、名前」
「え、…っんむっ」
好きだ、そう囁いた瞬間に噛み付くように唇を奪われた。
じわりと目の奥が熱くなる。
「は…名前っ、ん」
「んぅ、だ、大…っ」
甘く優しく、なんて程遠い。
いかにも大輝らしい激しいキスに私は息つく余裕もない。
力の入らない私に圧し掛かり、そのまま勢いよくソファに押し倒された。
「だ、大輝…っん、ここ、奏、んんっ」
「うっせ、…ん、はぁ」
私の制止など完全に無視。
顎を掴まれて舌を絡ませ、どんどん深くなるキス。
ビリビリと痺れるような感覚に朦朧としてきた。
時折うっすらと開く目と目が合えば顔が沸騰しそうになる。
大輝の藍の瞳に写る自分があまりにもうっとりとしていて、それが余計に羞恥を煽った。
「お、お願…も、無理…っや」
息も限界で苦しくなり、大輝の肩をどんどんと叩く。
すると、ちゅうっと大きな音を立ててやっと唇が離れた。
はぁはぁと息をする私を、少しだけ息を乱した大輝が見つめる。
恥ずかし過ぎて何処かに隠れてしまいたいが、ガッチリと抱えられてピクリとも動けない。
「…もっと」
「!む、無理!」
「ああ?拒否権なんかねーよ」
「ちょっと待って、頭ついてかない」
「あ?バカかおめーは」
「だって…怒ってるんじゃ…ないの?」
「怒ってんに決まってんだろ、バァカ」
「な、なんでこんな事」
「ああ?聞いてなかったのかよ、俺はおめーが好「ちょちょちょ!」…んだよ」
「それ…本気?」
「嘘ついてどーすんだ」
「大輝が、私を…す、好き…」
「っ、い、言い直してんじゃねーよ」
「だって…」
ただ驚いていた。
大輝が私みたいなの好きになるわけがない。
コイツの理想はマイちゃんなんじゃ…
そうだ、だって私なんか…
「ただの…抱き枕だし」
「!」
「…貧乳、だし」
「…あ、あれは…勢いでよ…別に本心ってわけじゃ」
「いいよ別に、どうせホントの事だもん」
「っだぁ!そういう顔すんな!調子狂うんだよ!言い返して来いっての!」
「…」
「!?…お、おい名前!!」
考えるのに精一杯で黙っていると、焦ったように大輝が顔を覗き込んで来た。
その表情は不安でいっぱいだ。
こんな顔、初めて見る。
「おい、どっかいてぇのか?…苦しいとかか!?」
「え?へ、平気だよ」
「お前の平気は信じらんねーんだよ!」
「…こないだみたいに、なってると思ったの?」
「っ!ったりめーだろ、奏さんから全部聞いたし」
「…全部…。そう…」
「…おい名前」
「な、何?」
「俺が乳だけで女選ぶと思ってんじゃねーぞ」
「は」
「ちゃんと俺はおめーの事…、って別に小さくもねーし…」
「っぷ!あっはは、もういいよ、ふふふ」
「!何笑ってやがる!」
「私も、大輝が好きだよ。大好き」
「!!…お、おー」
「私の返事聞く前にキスとかしないでよね」
「!るせー、待つのは嫌いだ」
「ふふ。大輝」
「…」
「大輝」
「んだよ」
「今日からまた一緒の布団で寝よ」
「そんなん、ったりめーだバァカ」


「テツ。私たちも一緒に寝よっか?ふふ」
「!?かっ、奏さん!?」

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