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第22Q

『名前!?あんた今何処に居んの!何やってんのよ!し、心配…したんだから!!』
「ご、ごめん。奏…ホント、ごめん」


『えっ!?な、夏村さんの家!?』
「う…と、とりあえず話す事が山ほどある」
『うち来る?』
「でも、そうするとアイツに見つかるでしょ」
『…青峰っち、すっごく心配してるよ』
「…そんな事ないでしょ」
『物凄い焦った声で私に電話して来たんだから』
「ご飯、食べてるかな」
『今テツが一緒にあんたんち居るよ』
「え、テツくんが?」
『うん。お世話係り兼、見張りだよ…何しちゃうか分かんないでしょ』
「ごめんなさい」
『とにかく!今からそこまで迎えに行くから、そこに居るイケメンさんに話つけといてよ!住所メールで送ってくれる?』
「ん。分かった…ありがと」
思ったより体調がなかなか回復せず、仕事を2日も休んでしまった。
勿論、夏村さんに現在進行形で迷惑掛けてる。
夜、帰宅後電話を貸して貰って奏に連絡を取った。
奏の凄く心配してくれてる声を聞いて、涙が出そうになるのをぐっと堪えた。
「夏村さん」
「うん、帰るの?」
「いえ。友達の家に」
「そっか。残念だな。ってこんな事言ったらキミの不幸を喜んでるみたいで性質が悪いね…ごめん」
「そんな!ご迷惑お掛けして、本当にすみませんでした」
「迷惑だなんて思ってないよ。今回はちょっと役得だったかな」
「や、役得って…」
「ごめんごめん」
「落ち着いたら、お礼させてください」
「お礼なんかいらないよ。ふふ、役得って言っただろう?いってらっしゃいとおかえりを言って貰えただけで十分だよ」
「…夏村さん」
綺麗な顔で微笑む夏村さん。
こういう時にいい人になるなんて反則だと思う。

暫くするとインターホンが鳴った。
奏が迎えに来てくれて、もう一度頭を下げてお礼を言ってから去った。
タクシーの中で奏は無言でずっと私の手を握っていてくれた。


奏の家に着いた。
大輝とテツくんが現れてから奏の家を訪れるのは初めてだ。
テツくんの物とかあって、こっちが変にドキドキする。
奏とテツくんは…どんな風に生活してるんだろう。
私と大輝は喧嘩ばっかりだったな。
ふと思い出して、無意識に微笑んでいたらしい。
「なーに笑ってんの?家出少女」
「…少女って年じゃないんだけど」
「ほら、お姉さんが話を聞いてやろうじゃないの」
「あはは。お願いします、奏姉さん」
私は2日前にあった事を全て奏に話した。
途中また過去を思い出して息苦しくなったけど、奏が背中を擦ってくれた。
「そっか…難しいとこだけどさ、あんたたち意地ばっか張ってて似た者同士だよね」
「え、似た者同士!?」
「変な意地張らなきゃこんな事にはなってなかったかもね。まあ、私が布団買えば?なんて冷やかしで意地悪な事言っちゃったのが原因かもだけど」
「奏はなんも悪くないでしょ。私が決めて行動したんだから」
「…本当は、別にこれからもずっと一緒に寝てたって良かったんでしょ?」
「…多分」
「絶対だよ」
「…弟だと思ってたのに」
「うん」
「だんだんよく分かんなくなって来て」
「うん」
「気付かないうちに依存してて…」
「うん」
「…もう平気だと思ってたのに。大輝にキツイ事言われたら…やっぱ駄目だった」
「そこまで分かってたら十分じゃない?」
「でも大輝は何も知らないし、また同じ事になったら私どうなっちゃうかなって。あはは、情けないね」
「情けなくなんかない。その事に関しては名前も青峰っちも悪くないんだから。悪いのは昔のあの男」
「私、大輝の手引っ叩いたり、来るなとか言った。怒ってるよ絶対」
「一瞬だって怒ってる風には見えなかったよ?心配で仕方ないって顔してた」
「…そんなの分かんないよ」
「人を好きになっちゃうと何でも不安にはなるよね。なんたって青峰っちってば無類の巨乳好きだし?」
「…私別に好きになったなんて一言も」
「えーあんたまだ認めないわけ?」
「み、認めるも何も私は!」
ガチャ
私と奏だけの静かな空間に突然響いたドアの開閉音。
「!?…奏?」
「あー、えーっと」
嫌な予感に体が強張り、玄関の方を向けずに下を向く。
ドタドタとご近所迷惑を顧みない大きな足音が響くと同時に、バンッとリビングのドアが開かれた。


「っ名前!!!」
「!!」

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