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第21Q

「名前!っ名前が!!」
『青峰っち!ちょっと!とにかく一旦落ち着いて!』


あれ…ここ、何処?
夢の中?
あ、こないだの夢の続き?
キセキの皆が居る。
『この青峰っち、中学時代みたいに楽しそうっスね』
『あーほんとだー。笑ってんねー』
『これも、あの彼女のお陰という所かな?』
『ふんっ。普段からこうやって練習に励むべきなのだよ』
『あれ?こっちのはなんだか2人が不穏な雰囲気っスよ〜』
『いったい何枚あるのだよ!』
『まだまだあるんスけど…あれ、下の方は白紙っスね』
『ねーねー、この写真誰が撮ってんのー?不思議なんですけどー』
『確かにね。まるで何かの場面を切り取ったようだ』
『おかしな事を言うのは止めろ、気味が悪いのだよ』
『っちょ!赤司っち!今、白紙が!!』
『な、なんなのだよ!!』
『えー、怖いんだけどー。なんで浮き出て来てんのー?』
『…興味深いね。これは?…大輝がかなり焦っているな。さっきのから繋げると…喧嘩でもしたか?』
『赤司っち!冷静過ぎっス!これ、もしかして青峰っちと黒子っちが今居ない事に何か関係してるんじゃ!?』
『まさか!そんな非現実的な事があるわけがないのだよ』
『無きにしも非ず、ってとこだな』


「…」
また中途半端なまま夢が終わった。
ゆっくりと瞼が上がり、柔らかい光が視界に入る。
あれ?
そういえば私…
思い出そうとするけど、頭がズキズキと痛んで考える事が出来ない。
「名前ちゃん!?」
「……夏村さん?」
私を酷く心配そうな、且つホッとしたような表情で覗き込む夏村さんが居た。
体を起こそうとするけど全然言う事を聞いてくれない。
「まだ寝てて」
「すみません…私…」
「ごめんね、ここ俺の家なんだ」
「えっ」
「昨日キミが目の前で倒れちゃった後、タクシーで運ばせて貰った」
「あ、す、すみません。大変なご迷惑を」
「いいから!まだ顔色が悪い。今日は仕事休みなよ。俺が上手く言っておくから」
「でも…」
「もう出勤時間だ。部屋、好きなように使ってていいから、ね?」
「すみません。ありがとうございます」
力無く笑うと、夏村さんが優しく頭を撫でた。
不思議と嫌悪感は無い。
こんな表情の夏村さんを見るのが初めてだからだろうか。
「じゃあ、いってくるから。あ、大輝くんには本当に連絡入れてないけど、大丈夫?」
「はい。ありがとうございます…いってらっしゃい」
「!…いってきます」
夏村さんが家を出て行った。
私、あれから朝までずっと寝ちゃったんだ。
いつも避けて避けて、嫌がってた人に助けられちゃって…どうしよ。
でもいつもの強引さも無くて優しかった。
大輝にも連絡しないでくれたし、感謝しないと。
とはいえ…
これからどうしよう。
携帯も家に置いて来ちゃった。
しかも部屋着にすっぴん。
色々最悪だ。
大輝…絶対怒ってるよね。
何も知らないんだから、あんな事言われても仕方ないのに。
私、1人で取り乱して…手を振り払ったり、怒鳴ったり。
ああ、どうしよう、帰れない。
ああだこうだと考えているうちに、私はまたいつの間にか眠ってしまっていた。


カチャッ
「…ん」
「あれ、名前ちゃん…ずっと寝てた?」
「え…あ、はい。え!もう夜!?」
「うん、今20時を回った所かな」
「あ、お疲れ様です…お、おかえりなさい」
「…ただいま。キミにおかえりって言って貰えるなんて幸せだな」
「そ、そんな…」
「そうだ、今日ね…大輝くんが会社に来てたよ」
「え!」
夏村さんは、今日あった事を私に話してくれた。
『あれ、大輝くん…どうしたの?』
『!なんでもねーよ』
『お姉さん、今日休みだよね?』
『…やっぱり来てねーのか』
『大丈夫かい?なんだか疲れてるみたいだけど』
『別に…』
『待って、何処に行くの?』
『あんたには関係ねーだろ』
『ある、かもしれないよ?』
『は?何適当な事言ってんだ?キレんぞ』
『名前ちゃん、どうかしたの?』
『!?…別に』
『困ってるなら協力するけど』
『ああ?あんたに助けて貰うなんて御免だぜ』
『ふふ、そう。…ねえ、キミ。本当に名前ちゃんの弟?』
『!!…何が言いてーんだよ』
『彼女のココに、跡があったんだけど』
『!?知らねーよ…おい待て。あんた、名前の事何か知ってんのか』
『おっと、そんなに睨まない睨まない』
『知ってんなら教えろ』
『とりあえず…今キミには会いたくない、とは言ってたかな』
『!!っ何処に居んだよ!教えろ!!』
『僕には何も言えないよ。約束だからね』
『てめっ!っざけんなよ』
『八つ当たりは勘弁してよ。名前ちゃんの意思なんだから』
『っ!…くっそ』
大輝はそのまま走り去ってしまったらしい。
その後どうしたかは分からない。
とりあえず、怒ってはいなかったみたい。
凄く心配してる様子だったって…
疲れた顔してたって…ちゃんと食べて寝てる?
そんな事今の私が言える立場じゃないけど…
何故か胸の辺りがぎゅっと苦しくなった。


「名前!ったくアイツ、何処で何してんだよ」
『大輝…』

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