「おい名前!俺スポドリな!」
「スポドリ下さいお願いします、でしょうが!」
3人と合流した私は、奏から執拗に質問攻めに遭って居た。
奏、また楽しんでる。
「ちょっと名前!あんたたち朝から何してんのよ〜むふふ」
「何もしてないわ!!変な妄想するの止めてよね」
「だぁーって、青峰っちが変な事したからやっちゃったんでしょ?こう、バッチーンと」
「うぐ、…引っ叩いたのは確かですけど」
「だいたい一緒に寝てるんだからさ、青峰っちがムラムラしちゃうのは当たり前だよね〜」
「はぁ!?なんでそうなる!?こっちは百歩譲って寝かしてやってるっていうのに!」
「だーからね。健康な高校男児がね、名前みたいなちんちくりんでも女子と一緒に寝てるわけよ」
「…ちんちくりん」
「生殺しなんて可哀想だわー青峰くん」
「ちょっと待て。なんであんた大輝の味方してんの」
「っていうかさ、毎日そんなバトるならさ。…布団一式買ってくれば済む話じゃん?」
「!!…そ、そうじゃんね」
「え?あ、…あれ?そこは『いや!私大輝と一緒がいい!』じゃないの?」
「止めてよ。そうだよ、買ってくればいいんだよ布団くらい」
「…あら。うわ、青峰っちごめん。私余計な事言ったかも。って名前、携帯出して何してんの?」
「え?近場の寝具屋さんの検索」
「えええっ!ちょっと待て!早まるな!」
「え、なんで。奏が言ったんじゃん」
「うあぁ、そういう事を望んでたんじゃないんだってばぁ」
奏が横で嘆いて居るのを無視して、私は淡々と寝具屋さんを検索していた。
なんで早くこうしなかったんだろう。
なんて。
…そんなの考えなくてももう分かってる。
大輝と一緒に寝るのが当たり前になってたから…
いや、違う。
嫌だ止めろと言いながらも、大輝が隣に居るのは悪くないって思うようになってたから。
それはつまり…
そこまで考えてブンブンと頭を振った。
私、何考えてる!
だ、大輝の事…。
「おーい、名前!何してんだよ」
「!?」
「あ、青峰っち!どした?」
「あ?テツがくたばったから一旦休憩だ」
「あ!うわ、ホントだ!テツーッ!!大丈夫ーっ!?」
奏が走ってテツくんの元に行ってしまった。
大輝と2人きり。
何これ、なんでちょっと緊張してんの?
「名前、何ボケっとしてんだよ」
「べ、別になんでもないよ」
「お前、俺のプレイ見てたか?見たいって言ってただろ、どうよ?」
「…凄い、かっこ良かったよ」
「は」
「…え!ちょ、うわ!」
「お、おま…」
大輝が赤面!
やば、私何言ってんの!
さっき遠くから見てた大輝を思い出して無意識に…
ちょ、私まで顔熱くなって来ちゃったし!
「お、お弁当!お弁当にしよう!お腹空いたっしょ?」
「お、おう」
「ここ広げるから皆で食べなよ!私ちょっと用あるから先食べてて」
「は?お、おい!名前!!」
大輝の制止を振り切って、私は1人走り出した。
着いた先は…寝具屋さん。
勢いで来てしまった。
奏は冗談で言ってたみたいだけど…布団、買うべきだよね。
「すみません。これ、今日自宅に届けて貰う事出来ますか?」
布団一式を買った。
そして運がいいのか悪いのか今日中に自宅まで届けて貰える事になった。
というのも…
私はやっぱり、大輝と一緒に寝る事に嫌悪感は無いのだと知る。
…今日から別々の布団だ。
それから私はストバスには戻らずに、1人自宅に帰った。
奏にメールしたら、大輝とテツくんにも伝えてくれた。
大輝が私が具合でも悪いのかと、俺も帰るかと言い出したらしいのだが、大丈夫だから気が済むまでバスケして来いと伝えて貰った。
時刻は夕方、6時。
夕飯の準備は出来ている。
あとは…布団だ。
ついさっき寝具屋のオジサンが届けてくれた布団を寝室まで運んだ。
届くのと鉢合わせたり、大輝が先に帰って来なくて良かったとホッとしてる。
早速広げて、ベッドの横に敷いてみた。
強烈な違和感だ。
これを大輝が見たらどう思うかな?
やっと広々寝れると喜んで飛び込むだろうか、
若しくは…
ガチャッ
「たーだいまーっと」
ビクっと肩が揺れる。
大輝が帰って来た。
寝室を飛び出してリビングに向かった。
「あ?なんだ名前、寝てたのか?」
「おかえり…先お風呂入っちゃえば?」
「…なんだよ。お前、今日なんかおかしくね?」
「え、何処が?あ、ご飯も出来てるから早くシャワーして来な」
「…おー」
腑に落ちないと言う顔をしながらも大輝はお風呂場に向かった。
その後食事中も微妙な空気になり、無理矢理なんでもない風を装ってはみたけどやっぱり大輝の怪訝そうな顔はそのままだった。
そして、夕飯の片付けを済ませて私もお風呂に入る。
布団を勝手に買った事に何故か後ろめたさを感じてしまい、悶々と考えているうちに思ったより長湯してしまったらしい。
ゴンゴン!
「おい、名前!風呂で寝てねーよな?」
「!?ね、寝てない!すぐ出るよ」
「おー、ならいいけどよ」
ビックリした。
…心配して来てくれたんだろうか。
ちょっとだけ嬉しいと思ってしまった自分にまた驚く。
また悩み始めないうちにとさっさと上がって部屋着に着替えた。
リビングに向かおうとお風呂場のドアを開けると…
寝室のドアを開けて突っ立っている大輝。
そして私に気付いたのか、こちらに顔を向けた。
「名前…なんなんだよ、これ」
「!!」
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