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第16Q

「あんた何やってんの」
「あ?何っておめー、追っ払い料だろ」


急に抱き締めてきたものだから動揺してたらこれだ。
暫くぎゅっとしてたと思ったら、不穏な手の動きを察知。
やわやわと腰やお腹を擦ってそのままどんどん上に上に…
そして冒頭に至る。
追っ払い料、だと?
「こんの、ドすけべがあぁぁあッ!!!」
ゴッ
「ぐあっ!いてえッ!!!っにすんだコラ!」
「それはこっちのセリフだからね!何処触ってんの!」
「しょーがねえだろ、ムラムラしちまったんだからよ」
「…ああそうだった!あんたはただの変態だった!」
「おー分かってんじゃねーか。なら話は早え、触らせろ」
「ばっかじゃないの!ばっかじゃないの!ばーっかじゃないの!?」
「…ケチな女だな」
「ケチとかそういう問題じゃないからね!」
最早恒例ともなった言い合いをなんとか終了させ、青峰の耳を引っ掴んで寝室に放り込んだ。
これだけ元気はあってもまだ熱は下がりきっていないのだ。
ちょっと元気になるとじっとしていられない、コイツはまさに子供だ。
いや、全く言う事聞かないし子供以下!

お風呂から上がって明日の青峰の食事を仕込み、寝室に向かう頃には時計は22時を指していた。
明日は仕事に行かなきゃならない。
早く寝なきゃ。
大人しく寝てるか確認する為、そーっと部屋のドアを開ける。
そこには寝付けないのか、ベッドでゴロゴロと動き回り「ちっ」とか「あー」とか「くっそ」とか悪態をついてる青峰が居た。
またしても可愛く思えてちょっと笑ってしまえば、鋭い目がジロリとこちらを睨み付けた。
「んだよ」
「っぷ、眠れないの?」
「笑い事じゃねー。寝過ぎて目が腐りそうだぜ」
「しょうがないでしょ、病人は寝るのが仕事!」
「体も動かしてねーし、眠くなるわけねーよ」
「ちゃんと治るまで我慢しなさいよ」
「お、そーだ。軽く運動すりゃいーんじゃねーか」
「は?何処で?家でも外でも暴れるのは絶対許さないからね」
「あ?ベッドでヤル事っつったら1つだろ」
「…」
私は話ながらベッドに潜り込もうとしてピタリと動きを止めた。
コイツ、今更だけど危険過ぎる。
「…変な事したら問答無用でベッドから落とすからね」
「わーったよ。冗談だっつの、ったく」
「…はぁ」
まあ、なんだかんだ言って口だけってのは分かってるから、一応釘を刺して自分も布団の中に潜り込んだ。
そして、当たり前のように腕を広げてやる。
「…ほら」
「…」
「来ないの?」
「…ガキ扱いすんじゃねーよ」
「あはは。大ちゃん、いい子いい子」
「うぜぇ」
なんだかんだと言いながら、私の腕の中に収まった大きな子供。
巨体を丸めて小さくなっている姿は、申し訳ないけど笑えてくる。
微熱のせいもあって温かい青峰を抱き締めていると、心地好い眠気がやって来た。
「大輝…おやすみ」
「!…おー」


あっという間に寝落ちれば…またあの夢。
『…こ、これが、青峰、だと?』
『みどちん興奮し過ぎー』
『っ!だから興奮などしていないのだよ!』
『確かに。大輝がこんな事をするなんて意外だね』
『これではまるで子供なのだよ。恥ずかしいヤツめ』
『えー、いいじゃないっスか!癒しっス!』
『んー、悪くはないよねー』
『紫原。お前ではこのベッドにすら入れないのだよ』
『ぶはは!確かにはみ出ちゃうっスね』
『とか言ってみどちん、自分もこうやってやって貰いたくて妄想してるんでしょーやらしー』
『なっ!お、俺は女に抱き締めてもらうなど!』
『いいじゃないか。きっと、あの大輝さえ大人しくさせてしまう程包容力のある子なんだろう』
『はぁ〜、会ってみたいっスね』
『俺お菓子くれる子なら誰でもいいよ〜』
『はは。敦らしいな』


「ったく、ソッコーで寝てんじゃねーよ」
「うぅん…大輝ー」

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