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第12Q

『朝だぞ、起きるのだよ。朝だぞ、起き』
「うっせえぇぇぇええええッ!!」


バシッ!!
「いぎゃっ!!」
「うーん…るせー…ぐぅ」
おはようございます。
朝からいったい何の仕打ちだ。
真ちゃんボイスをゆっくり聞く間もなく止められた上に頭を叩かれるとは。
コイツ…
アラーム勝手に消しといてまた寝てるじゃんか!
この鼻と口塞いで…
は!!
今は復讐してる場合じゃない!
今日は早く行かなきゃなんだった!
自分に巻き付いている手や足をよっこらしょと退かしてベッドから這い出る。
寝たのに体が重い…原因は言わずもがな。
朝食と昼食の準備をしてメモを残し、出勤準備完了だ。
メモの内容はコレ。
・お昼ご飯は冷蔵庫
・出掛ける時は絶対携帯持って
・鍵絶対閉めて
・窓も絶対閉めて
・お迎えに来るなら会社の外で待ってて
・会社の可愛い子にちょっかい掛けないで、恥ずかしいから!
たったこれだけでも、青峰のやつが守れるのは何項目だろうか。
まあとりあえずは、退社後の夏村さん避けになってくれればそれでいい。
それと引き換えに抱き枕やってるんだからね!!
「…いってきまーす」


NO!!
「名前ちゃん、おはよう」
「…おはようございます」
朝から会いたくなかった。
何故夏村さんも早いのだ。
その無駄にキラキラ輝く笑顔やめて欲しい。
「今日は早いんだね。嬉しいな、僕と一緒だ」
「あ、あはは。じゃあ、私こっちなので失礼します」
「まだちょっと早いから、送らせてよ」
「全然大丈夫です、1人で行きますから!」
「まあまあ、遠慮しないで」
最悪だ。
笑顔でがっちり手首掴まれた。
おーい、全然スマートじゃないよ、夏村さん。
こんな私に必死になるなよ頼むから。
ああ、周りの乙女たちの視線が痛い痛い痛い。
「昨日の…大輝くんだっけ?似てないんだね」
「よく言われます」
「…本当は彼氏だったりして」
「あはは、彼氏を会社に連れて来たりなんかしませんよ」
「んー、それもそうか」
「あの、手、離して貰えませんか?」
「ああ、ごめん!痛かった?」
「ははは(痛いよ許さないよ)」
「じゃあ、こうしよう」
「な、夏村さん(ぞぞぞ)」
ぎゃあああああ!
手、手握られた!
もう止めて!
イケメンは毒!!
かっこいいけど好きになれないんだって!
「もうお別れか、残念だな」
「すみません、ありがとうございました(頼んでないけどね!)」
「名前ちゃん、良かったら帰」
「じゃあ、失礼します!!」
「あー、また逃げられちゃった」
うあーーー!っぶなー!
帰りに…って言おうとしてたよね!
セーフセーフ!!
もうホント勘弁して、就業前からなんでこんな疲れにゃならんの。
自分の陣地に入って漸くホッとし、デスクに突っ伏した。

無心で仕事に取り掛かり、あっという間に終業時間になっていた。
夏村さんに見付かるまいと慌てて帰り支度をして下に降りる。
今日は撒けたみたいだ。
エントランスの先、外に目をやれば…居た。
ちゃんと言い付けを守って外で待つ青峰に笑みが零れた。
「だーいちゃん!」
「は!!んだよ、その呼び方はよ!」
「だって君は私の弟でしょ?…苗字じゃおかしいじゃん」
「…せめて、ちゃん付けやめろよな」
「えー、ちゃん付けの方が弟っぽい」
「そりゃおめーの思い込みだろ」
「おーい!名前〜!」
「え!奏!」
「お疲れ〜!青峰っちも護衛お疲れ〜」
「護衛かよ」
「お疲れ、どしたの?」
「早く終わったから来ちゃった」
「黒子くんは?」
「テツ?居るじゃんここに」
「!!…ご、ごめん黒子くん」
「いえ、慣れてますから。お疲れ様です」
「おめーどんくさいからな、余計テツに気付かねーんだろ」
「ど、どんくさい!?初めて言われたわ!!」
「あー、また始まったよ、痴話喧嘩」
「ちょ、奏!痴話喧嘩って何!違うから!」
「えー、だって一緒に寝る仲なんでしょー?」
「誰と誰が一緒に寝ているんだい?」
「ヒッ(また来た!!!)」
「あら、名前の先輩さん(名前まじでごめん)」
「こんにちは。話が聞こえちゃったんだけど…名前ちゃんと大輝くんは一緒に寝ているの?」
「…聞こえたんじゃなくて聞いてたんだろーが」
「あおっ、だ、大ちゃん!」
「あお、…大輝くんと名前さんはとても仲がいいんですよ」
「君は初めましてだね。僕は夏村涼と言います。」
「黒子テツヤです。よろしくお願いします」
「(黒子くん、よろしくしなくていいから!)夏村さん、すいません。これから用がありますので」
「そうか、残念だね。で、さっきの話の真相だけでもお聞かせ願えるかな?」
「あー?一緒に寝てんのかだろ?寝てんぞ、毎日な」
「(あ、お、み、ね!)」
「あはははは、名前はブラコンなんです〜!大輝くんの事がとーっても大好きで」
「あははは(泣いてもいいですか)」
「そうか、弟くんが大切なんだね」
「もういいだろ、帰ろーぜ」
「そうですね。名前さん、行きましょう」
「え、あ、うん。夏村さん、お疲れ様でした」
「…ああ、お疲れ様。また明日ね」

はあぁぁぁぁぁああ…
疲れた、もんのすごい疲れた。
ところで…とっても気になる事があるんだけど、
「青峰?何故私とお前は手を繋いでいるのだよ」
「!!その口調やめろ、うぜえ!」
言いながらバッと手を離した。
青峰が帰ろーぜと言った瞬間、ごく自然に私の手を取って歩き出したのだ。
「青峰っち、家まで繋いでてあげればいいのにー」
「は!?っんでだよ!」
「青峰くん、顔赤くありませんか?」
「なってねーよ」
「黒くてよく分かんないでしょ」
「んだと、てめー」
「あっはは、ホントあんたたち2人いいコンビだよね」
「「勝手にコンビにすんな!!」」


「ずっとこんな風に過ごせたらいいのにね、テツ」
「はい。僕もそう思います、奏さん」

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