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第10Q

「お迎えとかいいから!会社まで来んなあぁッ!」
「いーじゃねえか、有り難いだろ?」


「すいません、弟が!弟が大変お騒がせしましたぁああははは」
「ああ?誰がおとうッ…もがっ!!」
「い、いえ、お知り合いでしたら問題ありませんので」
「あははは、失礼します〜」
いやいやいやいや、問題だから!大問題だから!
何故来た青峰!アホか!やっぱアホなのか!
は!良かった!ちょうど終業時間じゃんか!
定時で速攻帰る!
「バカッ!バカッ!!何してんの!」
「だーから、迎え来てやったっつってんだろ」
「頼んでないからね!黒子くんも心配してたからね!携帯も置いて来たでしょあんた!」
「あー、そういや忘れてたな」
「だぁー、まあいいや。もう仕事終わったからとっとと帰るよ!」
「あれ、名前ちゃん?」
−−−。
ガッデム!!!
あー、一番厄介な人に捕まってしまった…
1つ先輩の『夏村さん』
最近こんなちんちくりんな私に言い寄ってくる物好きなイケメンさんだ。
正直困っている。
3次元のイケメンは苦手だ。
「お、お疲れ様です、夏村さん」
「名前ちゃん、お疲れ様。今日は定時?」
「えーと、はい。もう帰ろうかなぁと」
「ちょうど良かった。家まで送らせてよ」
「えっ!いや、今日は」
「すいません、コイツ今日は俺と帰るんで」
「あおみ、…(じゃなかった!)大ちゃん(ぷ)」
「ああ?誰が大ちゃんだコラ」
「ん?君は?」
「おおおお弟の大輝です」
「ああ、弟さん」
「(誰が弟だって?)」
「(いいから!お願い!!合わせて!)」
「大輝くんか。いつもお姉さんにはお世話になってます。夏村涼と言います。今日はお姉さんをお借りするのは…難しいかな?勤め先まで迎えに来るなんて健気な弟くんだね。感心だな」
「いやその、今日はたまたま、ね?」
「(いってぇ!抓んなコラ!)ああ、まぁ」
「仲が良さそうだね。今度君も一緒に食事でもどう?」
「焼肉ならいいぜ」
「バッカ!すすすすいません!礼儀がなってなくて!」
「あはは、いいね。じゃあ今度焼肉奢るよ、大輝くん」
「…(いけ好かねえな)」
「すみません、今日はこれで!」
「うん。名前ちゃん、今度はデートさせてね」
「(ゾゾゾ)は、あははは。お疲れ様でしッ!?な、夏村さん!て、手を…」
「君はいつも逃げるのが上手いね。捕まえるのも一苦労だ」
「いや、放っといていただけると有り難いのですが」
「うーん、そういうわけにはいかないよね。名前ちゃんが気になって仕方ないんだ」
ぞくッ
「し、失礼しますっ!!」
私の手首を掴んでいる夏村さんをなんとか振り切って、青峰を引っ掴んで脱兎の如く走り去った。
怖い、超怖い!
あんなイケメンと2人きりになったら自分が終わる!
ああ、今日は厄日だ!
なんとか会社を脱出し、青峰と2人帰り道を歩く。
「おい名前、なんだよあの気色悪い男はよ」
「…はぁ。この会社で1、2を争うイケメン様ですよ」
「へぇ、あんなのがかよ。で、おめーはなんであんなヤツに付き纏われてんだ?」
「私に聞かないで!」
「なんかきっかけでもあったんじゃねーの?じゃなきゃおめーみたいな普通な女に興味湧かねーだろ」
「うん、なんか腹立つけど反論出来ないよね。普通だし」
「うげ、急に素直になんじゃねーよ」
「悪かったね!同期の子によるとさ、自分に靡かなかったから気になるんじゃないかって話なんだよね」
「ハッ、ナルシストの考えそうなこったな」
「それだけならいいんだけど…」
「なんだよ、まだあんのか?」
「…急に顔近付けて来たもんだから…こう、バチンと…」
「な、殴ったのかよ!」
「しょうがないでしょ!!いきなりほっぺにキスとか!」
「まあ、名前らしいっちゃーらしいな」
「夏村さんにビンタなんてしたのは…私くらいなんだって」
「うえ、あいつ殴られて喜んで追い掛けてんのかよ、キモイな。そういやおめーなんで『弟』とか言ったんだよ。ああいうめんどくせーのが居るなら『彼氏』だとか言っときゃいいのによ」
「ああ、だって社内で彼氏連れ歩いてるなんて広まっちゃったらそれこそ大問題じゃん。ただでさえ夏村さんに目付けられたって変に浮いちゃってるんだから。私だって出来れば『彼氏』とか言って予防線張りたかったよ」
「あー、そういう事な。運のねーやつ」
「はぁ…あ!ていうか青峰!あんたなんで迎え来ようとか考えたわけ!?」
「あー?別に理由なんかねーよ。暇だったし、名刺置いてあったしなんとなく」
「あれはもしもの時の為に連絡取れるように置いといたのに…」
「いーじゃねーか、助けになっただろ?」
「う、そ、それは…多少は…いや、かなり。ありがとう…ございます…」
「…ったく、しょうがねーから毎日来てやるよ」
「は!?毎日!?」
「じゃねーと、あのキモ男に誘われんじゃねーの?」
「う、確かに…そろそろ断るのも限界かも…」
「決まりだな。俺に感謝して待遇良くしろよ」
「ちょ、それとこれとは別でしょ!」
ギャーギャーと言い合いながら帰宅。
騒がしいしホント傍迷惑なヤツだけど
こんな賑やかな日常も
まあ、悪くないかな、なんて。


「決めた。名前はこれから毎日俺の抱き枕な」
「なにぃーッ!?」

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