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第9Q

「ここから!この線から絶対こっち来ないでよ!」
「うっせーな、何回も言わなくてもわーってるっつの!」


毎晩ベッド争奪戦に時間を割くのはうんざりだと、少々…いや大分妥協してシングルベッドを半分こする事にした。
明日から私は長い1週間が始まる。
ぶっちゃけこんな所で体力を使いたくない。
「おい、もっとそっち行けよ」
「やだよ、ここが真ん中なんだから」
「お前は壁側だからいいけどな、俺は落ちそうなんだっつの」
「寝相が良ければ落ちませんー。もう寝るよ!」
「はぁ?このまま横向きでずっと居ろってのか!抱き枕とかねーのかよ」
「そんなもんあるか!もう勘弁して!明日から仕事なの!」
「…おー!いい抱き枕があんじゃねーか」
「はぁ?そんなもんうちにはッて、ちょっと!!!」
「んだよ。じっとしてろよ、抱き枕」
「バカか!あんたバカなのか!なんの為に境界線作ったと…!」
「お前、ジャストサイズだな…くぁ〜、眠くなってきた」
「…もうこの人ホント嫌」
「…くかぁー」
「寝てるし」
振り回されっぱなしだ。
後ろからホントに抱き枕みたいにしがみ付かれてる。
あーあ、悔しいけどなんかあったかくて
確かに…眠くなってきた。
これが真ちゃんだったらきっとドキドキして眠れやしないけど、コイツだから眠れちゃうのかな。
その前に、真ちゃんはこんな事しないけどね。
非常に不服だが、いい安眠剤には、なるかも…
おやす、み…


『朝だぞ、起きるのだよ。朝だぞ、起きるのだよ。朝だぞ、起きるのだよ。朝だ』
ピ。
「……おい名前、なんだよ今の声は」
「ふぁあ、おはよ。何って?真ちゃんの目覚ましボイスの事?」
「うぜえ!!普通のアラームに変えろ!まさか毎日これで起きてんじゃねーだろうな!」
「え、仕事の朝はコレだけど?」
「まじでやめろよ。緑間の声に起こされるなんて最悪だぜ」
真ちゃんの目覚ましボイスがお気に召さなかったらしい。
起きるのかと思ったらこちらに背を向けて寝始めた。
私は気分も爽やかに、顔を洗ってから朝食の準備だ。
青峰がいくら叩いても蹴っても起きなかったので(頑丈だから大丈夫!)1人で朝食を済ませた。仕事へ行く準備も完璧だ。
青峰のお昼もちゃんと作ってある、私偉い。
家を出る前にもう一度声を掛けに寝室に向かった。
「青峰ー。私もう仕事行くからねー」
「…んん」
「え?何」
「…名前…んー」
「だから、な…」
呼んでいるのかと思って近付けば、未だ気持ちよそうに寝ていた。
え、ちょっと!勝手に夢に私登場させないで!
起きている時より大分幼い寝顔を睨んで見たけど、なんだか毒気を抜かれてしまった。
風邪ひかないようにお腹にタオルケットを掛けてやった。
弟が居たらこんな感じなのかな。
まぁ大人しくしてれば、悪くないよね。
「大ちゃん、いってきます!ぷっ」
自分で言って噴いた。
爆睡する青峰を置いて、いざ出勤!


終業時間間近、携帯が震えた。
画面には…
「奏…なんだろ?…もしもし?」
『あ、名前?ちょっと青峰っち何処行ったの?』
「え?青峰なら家に居るかその辺ふらふらしてるんじゃない?」
『それが居ないみたいなんだよ。テツが会いに行ったんだけど留守で、携帯にも出ないんだって。家の中から音が聴こえたから携帯は家に置きっぱなんじゃないかって。』
「えー、何やってんのあの人。てか奏、いつからテツ呼び!?」
『そ、そんな事どうでもいいでしょ!何事も無ければいいけど、何かあってからじゃ遅いよ?保険証とか身分証明する物だって無いんだから』
「…そ、そうか。それはマズイな」
『とりあえずテツが今も探してるけど、何か分かったら連絡してよね』
「うん、分かった。ありがと!…ふふ、テツねぇ〜」
『からかってる場合か!じゃあね!』
ブツッ!!
あっはは、ヒステリック!
奏、なんだかんだでやっぱ黒子くんの事…
いやいや、それより青峰だ!
まったく週始めから何やらかしてくれてんの。
置き手紙しといたのに気付かなかったのかな。
「苗字さーん!1階から電話ですー」
「え、あ、はーい!」
1階?受付かな?なんだろ。
「お疲れ様です。お電話代わりました、苗字です」
『お疲れ様です。就業時間中すみません。今、エントランスに苗字さんのお知り合いと言う方が見えているのですが、何かアポは取られていますか?』
「し、知り合い…あの、名前は聞いてます?」
『いえ、あの…知り合いと言えば分かるの一点張りで、お名前がわからないのですが』
「あー。色黒で背がデカイ、口の悪い男、ですかね?」
『えっと、あの…色は黒いです、背も大きくて…口調もた、多少…』
「すみません!今すぐ!今っすぐ下に行きます!!!」


「ちょっとあんた何してんのホント何してんの!」
「おー、名前。迎えに来てやったぜ」

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