蘭丸くんの災難 | ナノ

男の影

「あれぇ〜?ランランどしたの〜?」
「あ?何がだよ」
「いつもの2割増しで眉間に皺が寄ってるよ〜ん?」
「…気のせいだろ」
「そんな時は、名前ちゃんのスープでも飲みに行っちゃう〜?」
「けっ、誰が行くか」
「んあ〜!そっかぁ!ランランはわざわざ行かなくても毎日名前ちゃんに会えるんだもんねぇ!いいなあ〜」
「うぜえ!」
朝っぱらからやけに絡んで来る嶺二に嫌気が差す。
別にあの女の事なんざ考えちゃいねえ!
つうか別に毎日顔合わしてるわけじゃねえし!
イライラしながら休憩がてらスタジオを飛び出した。


ふと、反対側の歩道に見慣れた姿を見つける。
「…あいつ」
黒っぽいカーデガンに膝丈の事務職風のスカート、髪をしっかりと結わいた姿のあいつがキョロキョロと辺りを見回していた。
誰か探してんのか?
暫く時計を見たり周りを見渡したりする事数分。
パッと表情が明るくなったと思ったら、その方向に向かって手を振った。
目で追ったその先には…男?
スーツに身を包み、理知そうな佇まいの男が近付いた。
そのまま近くのカフェに入った2人。
あの男、一体誰だ?
あんな女には縁のなさそうな男じゃねえか。
って、…別に気になっちゃいねえ。
なっちゃいねえが…
あの馬鹿が変な男に引っ掛かってねえか、チェックしてやるだけだ。
最近詐欺とか多いからな!
悪いヤツは許せねえ、それだけだ!

カフェに入った2人は窓際の席に座った。
俺は自販機の脇の電柱に寄り掛かって缶コーヒーを啜る。
上手く風景に馴染んだもんだ。
これで怪しくは見えねえだろ。
アイツは嬉しそうに笑って相手の男に何かを話していた。
男も相槌を打ったり身を乗り出して話したりと、なかなか盛り上がってるらしい。
一体何の話してやがんのか。
随分と親しい様に見える。
…。
あ?なんだ、今の間はよ!

ちびちびと啜っていた缶コーヒーが空になった頃、2人が店を出て来た。
時間にしたら15分くらいか。
相変わらずどっちも楽しそうに笑ってる。
店の前でアイツは男に深々と頭を下げて…
また笑顔を向けて手を振って別れた。
…やはり親しげだ。
ふと方向転換をしようとしたアイツが、その目に俺を捉える。
思わず声が漏れた。
「げ」
「!」
アイツの顔がさっきの男に会った時より明るくなった様な気がしたが…そ、そんな事どうでもいい!
別に俺は嬉しくもなんともねえし。
むしろうぜえ!
つうかあの顔はまさか…
「らーんーまーるーッ!!」
「ばッ!」
思った通り。
突然大声で俺の名を呼んで両手を振って来やがった。
周りにバレたらどうすんだあんの馬鹿!
満足したのか、コッチに来る事なく足早にその場を去るアイツ。
少し騒ついた周囲を避けるようにして、俺もスタジオに戻った。


…あ。
本職は何処に勤めてやがんのか、見とけば良かったか。
20150314

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