年上に恋した跡部のお話 | ナノ

晴天の憂鬱



チッ。
夕立が来るとかほざきやがったあの気象予報士、後でぶっ潰してやる。
勢い勇んで傘を持参したあの日、雨が降る事は無かった。
忍足のヤツが言ってた、てるてる坊主ってやつを逆さにするのだって何も効果がねえ。
どいつもこいつも役に立たねえな。
今日も今日とて外はイラつく程に晴れてやがる。
ったく、これはあれか、焦らしプレイってやつか。
忍足が寄越した小説にあった。
確か、女が男からの告白の返事を渋るシーン。
『どんだけ待たせる気だ!焦らしプレイかよ!』
…これか。
きっとあの女が雨が降らない様に俺よりも多くのてるてる坊主を作っているに違いない。
雨が降れば俺との遭遇率が上がるからな。
照れてやがるんだろう。
ふんっ、可愛いじゃねえの!
しょうがねえ、逆さ、もっと作るか。

ちょっと気分を持ち直した所で、廊下から俺を呼ぶ声が聞こえた。
「跡部さん、すみません!ちょっといいですか?」
「鳳か、なんだ」
「今日の部活、申し訳ないんですが欠席でお願いします」
「理由はなんだ」
「家の用事で…というかご近所の方が娘さんを置いて海外に長期行かれるって事で、俺の家でサポートする事になったので色々と」
「面倒な事頼まれたもんだな。まあいい、欠席については了承した」
「ありがとうございます」
「榊監督には俺から伝えておく」
「お願いします」
鳳が頭を下げて教室から出て行った後、入れ替わるように女の集団がやって来た。
あの様子から察するに、どうせまた
「あ、跡部先輩!!好きです!!」
ほらな。
「あーん?」
「す、好きです!!付き合って貰えませんか!!」
「断る。悪いが興味ねえ」
そう切り捨てれば逃げるように立ち去る女共。
言い寄って来る雌猫に興味はねえ。
追われるよりも、狩りをするように自分から追った方が数段おもしれえと知ってしまった。
外に体を向ければ、窓から差し込む太陽の光が憎らしい。
ったく、ひでぇ晴れだな。
俺が待ち望む雨はいつやって来るのか。
獲物を待つのもまあ、また一興だ。






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