「姉さん、あの、跡部さんはその…」
「ん?」
「俺の部活の先輩で、部長で…」
「そうなの?じゃあテニスやってるんだ!へぇ」
「それでその、いくらなんでもわ、ワンちゃんって言うのは」
「え?だって犬みたいだったんだもん!ね?」
「!?おい、お前!いい加減その犬呼ばわりは止めやがれ」
「だって私名前知らないし」
「し、知らねえ、だと!?」
「すすすすみません跡部さん!!姉さんそういう所疎くて!」
「え?そんな有名なの?ま、道理で綺麗なはずだよね〜」
「…綺麗?……」
…。
ふんっ、そうか。
やっぱりこの女、俺の事が好きなんじゃねえの!
綺麗だと?
女に言われても別に嬉しくなんかはねえが、ねえがな…
は!別にニヤけてなんかねえぞ!
名前知らなかったのだって、どうせ恥ずかしくて直接聞けなかったって所だろう!
…可愛いじゃねえの。
誤魔化したって無駄だぜ!
俺様のインサイトで全て見抜いてやる!
「それで、跡部くん?」
「!!な、なんだ」
「キミは今日なんでここに?」
「ふん!そんなの決まってるだろう!返しに来た」
「?…ああ、傘!要らないって言ったのに」
「それじゃあ俺様の気が済まねえ」
「うーん」
「受け取れ。俺様直々に選んでやったんだからありがたく思えよ」
「え!私の傘じゃないの!?」
「あーん?あれはお前が要らねえと言ったから俺の物にした。これはその代わりだ」
「えー(ねえ長太郎、ちょっとめんどくさいよこの子)」
「!?(姉さん!!聞こえちゃいます!!)」
なんだ?
ひそひそと何か言ってやがるな。
嬉しくて歓喜に震えてやがるのか?
ふん!可愛いとこあるじゃねえの!
「はぁ…まぁ傘はとりあえず受け取るよ、どうもありがと」
「!っは!当然だ!」
「あれ、長太郎お茶しか出してないの?」
「え、あ、はい。お茶請けが見当たらなくて」
「じゃあちょっと待ってて」
「?はい」
「おい、何処へ行くんだ、あーん?」
「ん?ちょっと家!すぐ戻るから待ってて!」
「?…ああ」
何か取りに行くのか?
『すぐ戻るから待ってて』だと?
この俺に向かってアイツそう言いやがったか!
…か、可愛いじゃねえの!!
「跡部さん、すみません。姉さん凄くマイペースな人で」
「あーん?いいじゃねえの!それくらいで丁度いい」
「ええ!?そ、そうなんですか?」
「俺様は簡単には落とされないぜ?」
「…(跡部さん何言ってんだろ)」
「お待たせ―!!」
「ふん、早かったじゃねえか」
「はい!これこれ!紅茶と相性抜群だよ!」
「「犬の骨型クッキー!?」」
「だから!!俺様は犬じゃねえ!!!」
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