いるから。 | ナノ

05

「おはようございまぁす」
「おぅ、おはよ!うわ、なんだよお前。朝っぱらから空気重!幸せが逃げてんぞー」
「柊さん、余計なお世話です」
「なんかあったのか?」
「ないですよ〜!テニスなんか始めちゃったんで、ちょっと体にガタがきてるんですよ。」
「テニス?バドミントンじゃなくてか?」
「はい。ちょっと興味があって(ちょっと所じゃないけど)」
「まあ、怪我しない程度に頑張れよ〜」
「はぁーい」
別に体にガタがきてるとかじゃない。
怪奇現象に悩みすぎて、なんて言えるわけないし。
とは言え、あの黒いスポーツタオルが現れてから1週間以上何も起こっていない。
安心は出来ないけれど。

今日は8月10日。
夏真っ盛り。
今日も私は暑さに挫けそうになりながらも仕事に励み、その結果定時上がりの帰路である。
妙な胸騒ぎがするのは気のせいだと思いたい。
「あー。気のせいじゃなかったよ、マジですか」
私の思いも虚しく…
汗を拭こうと取り出した私のお気に入りの水色のハンカチがフッと消えた。
隅に小さく黒猫の刺繍が入っている物で、限定品だった為もう買う事は出来ない。酷すぎる。
そして代わりに、音もなく手元に現れたのは…
白いリストバンド。
「いやいや、生暖かいとか、ちょっと勘弁してもらえませんかね」
つい先程まで誰かが使っていたかのように、体温を感じた。

帰宅後、怪奇コレクション置き場に新入りを投入。
真面目に怖いので捨ててしまおうかとも思ったのだが、そうしたら私の水色のハンカチも二度と戻って来ないような気がして捨てる事は出来なかった。
ちなみに現在保管してある物は、ボール2つ、スポーツタオル、リストバンド…テニスに使う物ばかりだ。
これが誰かの元から消えてここにあるのだとすれば、その人は今困っていないだろうか。
逆に私の物たちは、これらの持ち主の元へ届いているという事なのか。
この怪奇現象は私がテニスを始めた事に何か関係があるのだろうか。

(何の為に)
(誰の元へ…)

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