いるから。 | ナノ

04

1週間、何事もなく過ぎて行った。
その間何度かスクールにも行ったけど、この前のような事にはならずに初心者らしい下手っぷりで先生を悩ませた。

今日は何も予定の無い日曜日。
可哀想なヤツだと思わないで欲しい。
私にはやる事があるのだ。
私の秘密の部屋のお掃除。
秘密の部屋とは、私の趣味で埋め尽くされた所謂「オタク」な部屋の事である。
この四畳半の物置部屋は私の日々の疲れを癒してくれる。
ズラッと並べられた小説やコミックたち、ぬいぐるみ、フィギュア、ポスター。
そのどれもに必ず居るのが「跡部景吾」だ。
主人公の敵役ながらその存在感は重厚、圧巻。美しいその容姿も、上から目線な態度も、坊っちゃんのくせに口が悪い所も、口の割りに仲間思いな所も、冷徹に見えてすごく熱い男な所も、全てが私を魅了する。
ん?気持ち悪いって?
何と言われようと気にしない。
好きなんだから仕方ない。
作られた物語の中の作られた人間だとしても、私は彼が大好きなのだ。
あんな中学三年生がいるかって?
そこは私もまぁ笑っちゃうけど、いいのだ、そんな事は。
埃を払い、掃除機をかけてテーブルや床を拭く。
「よし!完璧!さて、何しよっかな〜」
部屋を見渡してまず目に入ったのがコミック34巻35巻。
何度読んでも飽きない。
おかげで大分草臥れてきてる。
34巻、跡部が立海に乗り込んで真田と戦う所に、これまた草臥れた水色の付箋を付けている。
『跡部頑張って!^-^』
得意の歪なニコニコマークを描いて。
この話の跡部がかっこよくてたまらないのだ。
そして応援せずにはいられない。
「新しいの貼り直そうかな、なんか小汚ないし」
草臥れた付箋をピリッと剥がしてテーブルの隅に置いた。
ペンを取ろうと手を伸ばしたら、粘着力の無くなったその付箋に肘が当たってハラリとテーブルから落ちる。
床に、落ちる、その瞬間。
来る!と何故か本能的に悟った。
そしてそれは現実となる。
付箋が姿を消して、代わりに現れたのは…
スポーツタオル?
刺繍入り。
黒地に金刺繍って…
「K.Aって、まさか…ね」

(神の悪戯か、怪奇現象か)
(それを知る術などない)

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