いるから。 | ナノ

02

『あ、あ、あ、跡部、景吾!本物!?嘘!なんで私の家に!?』
『あーん?誰だてめえ。俺様のファンか』
『え!喋った!すごい!本当に跡部なの!?しかも坊主!うわ!うわ!』
『!?気安く頭触るんじゃねぇ!ここは何処だ!てめぇ何者だ!』
『え?ここは私の家で、私は苗字名前!わ!やっぱホクロもちゃんとある!綺麗な顔してるね!』
『人の話を聞け、雌猫。おい、触るな!俺が聞きたいのは…』

ピンポーン

夢かっ!
意識浮上。
なんて短い夢だろうか。
せっかく跡部に会えたのに、現実のピンポンに邪魔された。誰だ、私の夢を妨げたヤツは!!
勢い勇んで玄関へ向かうと、クロネ○さんである。
「やった!来た!!」
興奮して眠気も怒りも吹き飛び、急くように届いた物を開封する。
「納品書納品書!HEAD C,Thech 1000 OMうんうん。HEAD PREMIER TOUR 600そうそう!」
中高バドミントン部でテニス未経験の私。大好きな跡部と同じラケット、同じシューズでテニスを始めようというまさに『形から』の女である。
早速明日の土曜日、スクールに予約を入れてあるのだ。コアなテニプリファンが居たらちょっと恥ずかしい。これで自前の氷帝のジャージで参加でもすれば一躍有名人だ、色々な意味で。
「よし、テニスボールもちゃんとあるし!黒いリストバンドもある!完璧!」
6つある鮮やかな黄色のテニスボールを取り出して、1つを手に取る。
「サインでもしとくか〜なんてね。でも自分のって分かる印は必要だよね」
油性マジックを持ってきてニコニコマークを書いた。
「よし!あはは、6つ共ニコニコが歪んでる!センスないね私!」
ラケットとシューズも取り出して装備、今すぐにでもテニスが出来そうだ。
ちょっとなら当てても平気だよね。ラケットを構えてボールを少し放る。
「俺様の美技に、酔いな!…なーんつって」
ぽーん
ボールが緩く弧を描いて床に落ちる…と思った瞬間。
「!?え?…は!?」
忽然とボールが消えた。
「なんで?ボールは?どこ!?」
ポトン、ポン、ポン、ポンポン…
「え…」
目の前で消えたはずのボールが後ろに落ちていた。というより、時間差で今落ちてきたという感じ。
「こ、怖…」
なんというホラーだ。
前に飛んで行ったのに、消えた瞬間後ろに落ちてるとか怖すぎる。
そして、そのテニスボールに違和感を感じた。
「…汚れてる。ていうか、ニコニコマーク、無い…」

先程6つ全てに書いた印が無い上に、使い込んだように汚れているのだ。明らかに私のボールではない。
「どういう事?」

(ぎゅっと握り締めたボールに)
(じんわりと温かさを感じた)

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