いるから。 | ナノ

01

「あー、あっつい…」
ジリジリと太陽がこれでもかと照り付ける7月の終わり。
夏が苦手な私には一番辛い時期だ。
現に、昼休憩で外に出ただけのたった数分でへばっている。
灼熱地獄から無事帰還。
デスクに戻って、行儀悪く両手両足を広げて全身で冷気を浴びる。
「くぁー極楽極楽」
バシッ
「いだっ!…て柊さん!」
「そのカッコやめろ、女終わってんぞ」
柊要。
…周囲から信頼され優しくて超イケメン!!で有名な私の上司だ。
「よ、余計なお世話ですよ!いいんです!私なんかもう既に色々終わってますから〜」
「なんだそりゃ。あー、お前午後はA社とB社に書類届けて挨拶したら直帰な。よろしく頼むわ」
「ぅげ!この暑い中!鬼!鬼畜!!」
「なんとでも言え。いいだろ、直帰出来んだから。お前のやり方次第で楽出来るんだぞ?」
「もう、分かりましたよ!しっかり届けてきます!明日飲み物奢ってくださいね!」
「なーに言ってんだ、さっさと行って来い」
というわけで、地獄に逆戻り。
夏が苦手だって言ってるのにこの仕打ちはなんだ。
もっと若い子に行かせればいいのに。
シミが出来たらどうしてくれる!
なーんて小言言ってる時点で私もう若くないんだなと悟る。
早く終わらせて家でのんびりしてやるんだから。


「ただいまー!ぐっ暑い!エアコンエアコン!!」
午後4時を回った所で帰宅。思ったより早く帰れた。
うん、上出来、私天才!
エアコンのスイッチを入れ、体に冷たい麦茶を流し込む。
「あ゛ー生き返った!!」
ソファに横になると、ローテーブルには「テニスの王子様35巻」が、跡部の坊主表紙で置かれている。昨夜読んでしまい忘れたものだ。
「はーぁ、あんたほんとイケメン」
坊主頭の跡部を見つめながらうっとり。
気持ち悪いとか思わないで欲しい。
人間誰しも、好きなものを愛でる時はそうなるだろう。
私は至って普通、なはずだ。
暑さで相当体は参ってたらしい。
ぼんやりしていたらドッと疲れが押し寄せて
…ものの数分で寝てしまった。
跡部を見つめながら寝落ちるなんて幸せだ。
いい夢見れそう、というかそれは願望。

(夢でもいいから会いたい、なんて思う私は)
(間違いなく末期)

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