いるから。 | ナノ

10

「ん…、ん?」
あれ、ベッド?
私ベッドに寝たんだっけ?
いや、跡部のお風呂待っててそのままソファーで寝落ちして…
っていうか、なんかあったかいんだけど息苦し…
「ひっ!!〜ッ!?!?!?」
叫び声を寸でのところで呑み込んだ。
私偉い!
何この状況!!
目の前に、てかもう鼻先くっつきそうな距離に跡部の寝顔!
腕枕してるし、片手はガッチリ腰に回ってるし、足絡まってるし!
しかも何故上半身裸!?
私Tシャツ出したよね!?
なにコイツ本当に中学生か!!
いや中学生なんだけどさ!
寝起きにこのアップは心臓に悪いです、私一般人。
はぁ…しっかし
「…本当に…跡部なんだ」
思わず漏れた一言。
いまいち実感無かったけど、こうも近くでくっついてたらもう信じるしかない。
本当に、跡部景吾が次元を超えて今ここにいるのだ。
目の前の整った顔をまじまじと見つめてみる。
サラサラの髪は無くなっちゃったけど…本当に綺麗。
至って普通な自分が惨めに思えてくる。
起きた瞬間は絶叫しそうな位驚いたけど、無駄の無い筋肉質な腕にしっかりと包み込まれているこの状況にも慣れてきた。
むしろ、あったかくて安心する。
行き場を失っていた自分の手を、思い切って跡部の広い背中にグッと回して擦り寄った。
すごく、あったかい…
「う、ん…」
「わ」
もぞもぞと動いた跡部はまだ夢の中なのか、ギュッと強く抱き締め直してきた。
さっきよりもっと距離が縮まる。
跡部の規則的な心臓の音が心地好い。
「ん」
瞼が揺れた。
そろそろキングのお目覚めだろうか。
綺麗なアイスブルーの瞳が覗くのを待ちわびる。
「っん。ん?お前、起きてたのか」
「うん。おはよう、跡部」
「…お前、この状況に驚かねぇのかよ」
「いや、驚いたからね、絶叫しそうな位さ。でもなんかだんだん心地好くなってきちゃって、あったかいし」
「フンッ。ずっと抱いててやったんだ、冷えるわけねぇだろ。俺様が添い寝してやったんだからな、寝心地悪いわけがねぇ」
「すごい自信!ま、そだね。ぐっすり眠れた、ありがと。疲れ取れたよ」
「!……変なやつ」
抱き締めたままふいと目を逸らされた。
何これ、照れてるの?
「し、仕方ねぇからこの俺様が毎日添い寝してやってもいいぜ?」
「っぷ!ふふっ!じゃあ、お願いしようかな」
デレた、跡部がデレた。
やっぱりちょっとは中学生らしい所もあるのかな。
「あ!そうだ私、苗字名前!跡部が元の世界に帰れるまで、ちゃんとサポートするから安心して!よろしくね、跡部様!」
「…散々呼び捨てしといて様はねぇだろ。フッ。まぁ、よろしく頼むぜ、名前」

(元の世界に帰れるまで…そう)
(あくまで期間限定、分かってる)

prev / next

[ back to top ]

×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -