THE PRINCE OF TENNIS | ナノ

SICKNESS/跡部

私の席は氷帝の全女子が羨む程の神席と言われる席だ。
理由は簡単、隣を見れば一目瞭然だ。
「あーん?何か用か」
「別に…」
跡部だ。
はっきり言って迷惑だ。
先生から頼りにされてるから良く指されるイコール私も先生の視界に入る。
休み時間になれば女子が騒ぎ出して収拾がつかない。
そして何より困るのが…
そんなめんどくさい男を好きになってしまった自分。
授業中の真剣な表情が綺麗だったからなんて安易な理由で落ちてしまった私はきっと、休み時間に群がる女子以上の単細胞だ。
1人悶々と苦悩していると横から紙屑が飛んで来た。
『開け』
顎をくいっと上げて口パクで伝えて来たのは勿論跡部。
眉間に皺を寄せて仕方ないアピールをしつつ紙を開くと…
『あの教師、昨日と髪の量が違うぜ』
「ぶはっ!!」
「…なんだ?苗字、何がおかしい」
「す、すいませんっ」
「授業に集中しろ」
「はい」
突然吹き出した私は先生の睨みに加え教室中の注目を集め、とんだ辱めを受ける事となった。
隣では口に手をやってクツクツと笑っている元凶。
私が落ちてしまった原因は、この男のこんな一面を知ってしまったからでもある。
こんな感じで私だけ被害を受ける事が多い。

「ちょっと跡部!もうああいうの止めて」
「あーん?お前が眠そうにしてたから起こしてやったんじゃねえか」
「余計なお世話!」
「ふんっ、ありがたく思えよ」
そう言い残して教室を去る跡部の後ろには金魚の糞の様に女子が続く。
トイレだったらどうする気なのか。
ドカリと椅子に座って盛大な溜息を吐くと今度は更に面倒な男がやって来た。
「苗字、また跡部にやられたんやて?」
「…何しに来た忍足」
「うわー、そんなあからさまに迷惑がらんでもええやん」
「用が無いなら帰って下さい」
「冷たい事言うなや、これでも心配してんで?」
「何を」
「苗字が跡部ん事す「うあぁぁぁぁぁああああ!!」…耳痛いわ」
「ちょっと!あんた何なの!?」
「んー、恋愛小説愛読者の勘?」
「うざい!ああ!最悪だ!」
とんだ曲者だ。
やっぱりコイツも相当めんどくさいヤツだった。
クラスも違うのに何故分かる!?
思わず忍足に掴み掛かる勢いで近寄る。
「苗字、ちょっと離れよか?」
「はい?」
「後ろからごっつ恐ろしいオーラ感じるねん」
「意味が分からな…」
「忍足、なんでお前が俺様の席に座ってやがる」
「おー、跡部。ちょっと苗字借りとるで」
「あーん?別に俺様のもんじゃねえ」
「あ、そ。なんやおっかない顔しとったから、あかんかったかなと思てな」
「ふんっ。休み時間終わるぞ、さっさと帰れ」
「はいはい、邪魔者は退散するで〜」
「うぜえぞ忍足」
結局何がしたかったのか忍足はあっさりと帰って行った。
私が跡部を好きな事が厄介なヤツにばれた。
ああ、もう今すぐ席替えしたい。
ていうかもう忍足来るな。
机にだらんと突っ伏して溜息を吐くと隣に跡部が座る気配。
特にお互い何も話さないので妙な沈黙が流れている。
「おい」
「…」
「苗字」
「ん」
「お前忍足が好きなのか」
「ぶっ!!」
突っ伏したまま吹き出した。
起き上がる気にもなれない。
「意味が分かりません」
「よく一緒に居るじゃねえか」
「…去年委員会が一緒だっただけ」
「それだけであんな親しくなるか?」
「親しくないから」
話はそこで途切れ、チャイムが次の授業の始業を知らせた。

現在、授業が始まって暫く経つのだが…
何故か隣からの異様なまでの視線が痛い。
無言でガン飛ばして来るのは止めて欲しい。
少しすると攻撃的な視線は感じなくなり、やっと板書し始めたようだ。
下を向いてペンを走らせている。
ホッと安心した所で、隣からビリっという音と共にまた紙屑が飛んで来た。
…板書じゃなかったらしい。
チラリと横を見るが本人は黒板を見ながら知らんぷりだ。
いったい何なの。
くしゃくしゃの紙をゆっくり開いて私は固まった。
『お前を見てるとイライラする』
続いてもう1つ紙が飛んで来る。
『お前の行動はいちいち癇に障る』
何これ、新手の嫌がらせ?
紙は次々と飛んで来る。
『お前が人に見せる笑顔がキモイ』
え、ちょっと私泣いてもいいかな。
『お前が忍足と居ると気持ちがわりぃ』
気持ち悪いってどういう事!
『お前が隣に居ると疲れる』
なんかもう悪口でしかないよコレ。
『意味が分からねえ』
…それはこっちのセリフ。
さすがに腹が立って隣を睨み付けると想像とは全く違う表情の跡部が居た。
顎に手を当ててボーっとしている。
そしてチラリと私を見ると更にもう1つ、紙を飛ばして来た。
そろそろ私の怒りボルテージも振り切れそうだ。
紙を一度ぐしゃっと握り締めてから開いた。
そこには…

『お前を見てると、心臓の辺りが苦しい
俺だけに笑わないお前が許せねえ』


「跡部…あんた最悪に酷い病気だね」
「あーん?病気、だと!?」

prev / next

[ back to top ]

×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -