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21 Perche

「名前ちゃん!1位おめでとぉ〜」
「さすがだな、名前」
「1位だなんて!本当に凄いです〜!」
「うんうん!ほんと凄いよ名前!」
「名前ちゃん、おめでとうございますっ」
「あの神宮寺レンをやる気にさせるなんて。うん、さすが名前だわ」
「あ、ありがとう」
Aクラスにて、皆から戸惑うくらいの称賛の嵐。
今日は課題の結果発表の日だった。
結果はまさかの第1位。
私と彼のペアが2位と大差をつけての断トツトップだったのだ。
確かに満足の行くものが出来たし、いい所まで行けるって思ってはいたけれど…まさか1位を貰えるなんて思っていなかったので驚きを隠しきれない。
皆が盛り上がる中、まさちゃんがゆっくりと私に近付く。
「名前」
「まさちゃん」
「あの神宮寺と…よく頑張ったな。お疲れ様」
「ありがとう!」
頭にポンと手を置いて優しく微笑むまさちゃんに笑い返した。
頭を撫でる手が心地よくてじっとしていれば、急にまさちゃんの表情が曇る。
「?」
「…聖川、その手を退けろ」
「…神宮寺」
「神宮寺?」
振り向くと同時、まさちゃんの手よりも大きくてがっしりした手に力一杯引き寄せられた。
目の前にはオレンジ色の髪。
神宮寺レンの腕の中に居るのだと気付く。
「!?」
「ッ神宮寺!貴様!」
「レディ!1位だよ、俺たちの曲」
「じ、神宮寺さ」
「ん?違うだろう?」
「!」
少し体を離して私を見つめ、至近距離で囁かれた低くて艶のある声に心臓が跳ねる。
心臓の音が彼にまで伝わってしまいそうだ。
「レディ、俺の名前は?」
「!…れ、レン、くん…」
「うん、そうだね」
「ちょっと、は、離して」
「どうして?」
「どうしてって!」
「俺たちの曲が認められたんだ。こんなに嬉しい事は無いだろう?」
「そ、それはそうだけどこんな」
「俺は自分の気持ちを素直に表現しているだけなんだけどな?」
「…その辺にしておけ、神宮寺」
まさちゃんの酷く冷たい声が響いた。
その声に反応するように、私を抱き締める腕に力が入る。
私、どうかしてしまったのかもしれない。
触れ合った場所がどんどん熱を持ち出した気がして恥ずかしくて、私は思わずレンくんを押し退けていた。
「来い、名前!」
まさちゃんに呼ばれて、熱を持った顔を隠す様に彼の胸に飛び込んだ。
ポンポンと背中を叩いて落ち着かせてくれるまさちゃん。
少しだけ緊張が解れる。
「……名前」
聞いた事のないトーンの声が聞こえて不思議に思い少し顔を上げてから、私は目を見開いた。
そして無意識に小さく声を漏らした。
「レンくん…」
私とまさちゃんを見るその目は哀しみに沈み、これでもかと悲壮な色を露わにしていた。
あまりのその表情に戸惑うしかない。
私の背を叩いてくれていたまさちゃんの手も、時間が止まったかのように動かなかった。
シンと鎮まり返ったその場所に、突然沢山の黄色い声が入り込んで来る。
「神宮寺さん!おめでとうございます!」
「さすがレン!!」
「おめでとうございます!」
「レン様!」
あっという間に女の子に囲まれたレンくんは、ハッとした後すぐに笑顔でそれに応えた。
それを見た私の心臓は、感じた事の無いリズムを刻んだ。
なんだか、息苦しい?
呆然としていれば、チラリとこちらを見たレンくんと視線が絡む。
「!」
「…」
未だ悲しげな色を宿したその瞳は、直ぐにまた周りの女の子に向けられてしまった。

…私、今何を思った?


(何故)
(どうしてこんなにも胸が騒つくのだろう)

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