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1 Preludio

「まさちゃん、おはよ!」
「ああ。名前、おはよう」
今日は早乙女学園の入学式。
凄まじい倍率をなんとか潜り抜けて今日のこの日を迎えた。
今は、幼い頃からずっと一緒のまさちゃんと会場に向かう所。
「名前、寮の片付けは終わったのか?」
「あー、うん。まあ、それなりに」
「それなりとはなんだ。寮は男子禁制なのだから俺は見に行ってやれないが、女子なら女子らしく自分の身の回りの事ぐらい」
「あー!分かった分かった!ちゃんと出来るから!今日はそういうのなし!ね!」
「…まあ、今日は晴れの日だ。このくらいで許してやる」
「まさちゃん、ほんとお母さんみたいだよ」
「お前の事を思って言っているのだぞ」
「分かってるよ。いつもありがとう、まさちゃん」
「わ、分かっているなら…それでいい」
「へへ!まさちゃん大好き!!」
「!こ、こら!軽々しく好きなどと口にするな!」
勢いよく腕に飛びつけば、照れながらも支えてくれるまさちゃん。
私は彼の事が大好きだ。
でもそれはきっと恋愛感情では無い。
そして多分、彼も同じなのだろう。
こんな関係がとても心地好い。


色々な意味で壮絶な入学式を終え各教室に向かった。
私はまさちゃんと同じAクラス。
どうやらこのクラスの主席だったらしい。
あと一歩でSクラスだったと林檎先生に言われた。
まあ、ぶっちゃけAクラスで良かったって思ってる。
だって出来るならまさちゃんと一緒がいいって思ってたから。

自己紹介が始まった。
色んな子が居る。
1人、緊張していたのか上手く出来なかった子も居た。
まさちゃんがちょっと気にしてたけど知り合いなのかな?
私はピアノを披露した。
ピアノは得意だ。
小さな頃からまさちゃんといつも一緒に弾いていた。
まさちゃんと連弾するのが大好きだ。
即興を弾き終えると、一瞬教室内がシーンとなり…
「すっごぉ〜い!名前ちゃん素敵よぉ〜!先生聞いてはいたけど、まさかこんなに上手だとは思わなかったわ!」
「林檎先生、ありがとう」
一斉に拍手を浴びた。
嬉しくなって笑顔でまさちゃんの方を向くとニコっと笑ってくれた。
口パクで『よくやった』って言ってくれた、すごく嬉しい。
今日の予定はここまで。
林檎先生が退室すると、皆それぞれ動き出した。
バッグを持ってまさちゃんの所に向かうと2人の男の子と談笑していた。
私に気付いたまさちゃんが手招きをする。
「名前」
「まさちゃん!お友達?」
「ああ、紹介する。一十木と四ノ宮だ」
「君、ピアノ凄かった子だよね!俺一十木音也!よろしくね!」
「よろしく!苗字名前です!一十木君は、ギター上手だね」
「ありがとう!あ、音也でいいよ!俺も名前って呼んでいい?」
「うん!よろしくね、音也!」
「かわいいです〜!!」
「ぎゃ!!」
「し、四ノ宮!」
「那月〜!」
突然巨体が体当たりして来て目の前が真っ暗になり、ぎゅうぎゅうと抱き締められた。どうやら犯人は四ノ宮君?らしい。
抱き込まれて見えない。
もぞもぞと動いて腕の間からポンっと顔を出すと、目の前に綺麗な笑みを浮かべる男の子の顔。
「僕、四ノ宮那月って言います!なっちゃんって呼んで下さい!」
「なっちゃん!よろしくね」
「はい!僕、可愛い物が大好きなんですよぉ!名前ちゃん、とっても可愛いです!ぎゅぅぅうう」
「ぎゃ!え、わ、私!?」
「四ノ宮、分かったからもう離せ」
「あ!ごめんなさい!つい抱きついてしまいました」
しゅんと項垂れるなっちゃん。
巨体が背中を丸めてなんだか可愛い。
私なんかより君の方がずっと可愛いよ、と思う。
よしよししてあげた。
突然、廊下が騒がしくなった。
女の子のきゃっきゃする声が聞こえる。
何事かと振り向いて見ようとすると、まさちゃんに両手で顔を挟まれて動けなくなった。
「まさちゃん、どしたの?」
「目の毒だ、見なくていい」
「えー?何が?気になるよ」
「お前が気にする事では無い」
「まさちゃんのケチ!」
やっと解放されて振り向くと、女の子の群れ。
そしてその中心にいる男の子の後ろ姿が目に入った。
綺麗なオレンジの髪。
アレだけ既に人気があるのだから、大層整った顔をしているんだろう。
まあ、特に興味は湧かないけど。
「まさちゃん、知り合い?」
「そんな所だ」
「ふぅん」
もう一度振り返ったが既に姿は無かった。
まさちゃんの知り合いなら私も顔くらい知っていそうだけど。


(序章)
(物語のはじまりはじまり)

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