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自覚

試合が終了して会場の外に出た。
大我くんとは連絡が取れないので、まだ誠凛の皆で喜びを分かち合ってる所なんだろうと思う。
ついさっきまで泣いていたのか鼻声になったさつきちゃんから連絡があった。
鼻を啜りながら『お願い。青峰くんの所に行って』と言われた。
言われなくても行くつもりだったよ、という言葉を飲み込んで教えて貰った場所に急ぐ。
あ、居た。
地べたに寝転んでる。
「青峰くん」
「…名前」
「お疲れ様」
「…試合、見てたか?」
「ちょっと用があって遅くなっちゃって、最後の数分だけ」
「んだそれ。お前が見たの、俺の無様なとこだけじゃねーか」
「無様なんかじゃないよ」
「俺は負けた」
「…そうだね」
「あーあ。負けたのが快感だったとか…俺ただのMじゃねーか、キモ」
「いいと思うよ」
「よくねーだろ」
「初体験だし、いいんじゃない?」
「はぁ?止めろよその言い方。はぁ…火神にも言っとけ。たかが1回勝ったくらいで調子こいてんじゃねーぞってな」
「ふふ、分かった」
「笑ってんじゃねーよ」
「ふふふ」
「あー…練習してえな」
青峰くんの顔が幾分が弛んでる様に見えて嬉しさを堪え切れず笑う。
そんな私を見て薄く笑った青峰くんに、心臓がまた早鐘を打った。
ヴヴヴ、ヴヴヴ、
ポケットの携帯が震えた。
大我くんから『今何処だ?』とメール…そろそろ帰る時間らしい。
「…私、もう行かなきゃ」
「…」
「…青峰くん。また前みたいに…私にバスケ教えてね」
「!?」
冗談交じりに言った言葉に物凄い反応を示して飛び起きた青峰くん。
「名前っ」
私の名前を呼んで勢いよく立ち上がり手を掴んだ。
目が合うと気まずかったのかフイと逸らされた。
私は青峰くんの大きなその手をそっと撫でる。
そしてゆっくりと手を解いて
「お疲れ様。負けた青峰くんもかっこ良かったよ。じゃあね」
「おいっ!名前!?」
彼の制止を振り切って走り去った。

ああ、掴まれていた手が熱い。
顔が熱い。
心臓が煩い。
私は青峰くんが…好きだ。
昔の青峰くんも今の青峰くんも全部。

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