kirakira | ナノ

意識

夏休みももうすぐ終わるという頃、大我くんは誠凛高校バスケ部の山合宿に行ってしまった。
私は大我くんの部屋の留守を預かるという大事な任務を与えられた為、毎日しっかりお掃除をしている。
って言っても元々大して散らかってはいないんだけど。
合宿は明日まで。
大我くんは明日帰って来る。
今日は特にピカピカにしておこうと掃除機を取り出してかけ始めると、ポケットの中の携帯が震えた。
だいたい予想はついてるけど…やっぱり。
着信、青峰大輝。
「もしもしー」
『よぉ、暇人』
「…切るよ」
『んだよ、ジョーダンだろ』
「今日はなんですか」
『お前よ、明々後日暇?』
「明々後日?…31?」
『おー』
「特に用は無いけど…夏休み最終日じゃん」
『用が無いならちょっと付き合え』
「え、何処に?」
『1日俺に寄越せっつってんの』
「寄越せって…まぁ、いいけど、暇だし」
『くくっ、やっぱ暇なんじゃねーか』
「う、うるさいな!で、何処に行けばいいの?」
『んー、そうだな…海、海行こーぜ』
「海!?」
『だから水着持って来いよ』
「え!?無理!!」
『んだよ、別にお前の水着姿に期待はしてねーぞ』
「な!」
『じゃ、10時に駅な!忘れんなよ!』
「ちょ!ちょっと!!…切れた」
あっという間に電話は切れた。
何故夏休み最終日に海…
水着、引っ張り出さなきゃ。
青峰くんに言われるがまま夏休み最後の予定が決まってしまった。
相変わらず強引だなと思いつつも、ちょっとだけ嬉しいと思っていたりする…ちょっとだけ。

翌日、大我くんがくたくたになって合宿から帰って来た。
家に帰る前に私の所に寄ってくれたらしい。
大荷物のまま玄関に現れた。
「大我くん、お疲れ様!おかえり!」
「ただいま。サンキューな」
「いいよいいよ。あ、郵便物とか届いてたから今持って行くね」
「おう、サンキュー。先部屋行ってる」
預かっていた郵便物と、お母さんに渡された夕飯のお裾分けを持って大我くんの家に上がると、お風呂場からシャワーの音が聞こえた。
放り出された荷物を整理しながら、なんだかちょっと母親になった気分だ。
「あ、名前。わりぃ」
「平気平気!これくらいさせ、て、…あ」
「え、あ!!わ、わりぃ!!今上着る!!」
「あ、はは」
お風呂上がりの大我くんは無理も無いのだけど上半身裸だった。
暑いのにシャツを着せる事になってこっちが申し訳ない気分だ。
やっぱり毎日鍛えてるだけあって凄い筋肉だな。
青峰くんもあんな感じなんだろうか。
そういえば一緒に海に行く約束してるって事は…私青峰くんの裸を見る事になるって事!?
ボッと火が付いたように顔が熱くなる。
私何考えてるの!!
1人あたふたしていると大我くんがポカンとしてこっちを見た。
「名前、何してんだ?」
「!な、なんでもないよ!!」
「そうか?なんか顔赤いぞ」
「暑いからだよ!」
「…変なヤツ」
変なヤツだ、本当に。
変に意識してどうするの…
とはいえ、青峰くんと出掛ける事を自分が結構楽しみにしている事は否めない。
熱い頬をなんとか鎮めて、明後日の事を思った。

prev / next

[ back to top ]

×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -