kirakira | ナノ

遭遇

「名前!」
「あ、大我くんおはよう」
「おす!」
「せっかくの休みなのになんかごめん。ほんと平気?」
「気にすんなって!だいたい今日は俺の事祝ってくれんだろ?」
「うん!」
そう。
今日は過ぎてしまったけど8月2日の大我くんの誕生日をお祝いする為、2人で出掛ける約束をしていたのだ。
水族館に行って、ショッピングをして、焼き肉を食べて帰る事になってる。
大我くんをかなり気に入っているお母さんが、沢山食べて来なさいって焼き肉代をくれた。
「大我くん、今日一番の楽しみは焼き肉でしょ」
「は!?そ、そんな事ねえって!まず水族館だろ?」
「あはは!目が泳いでるよ」
「う、そりゃ焼き肉だって楽しみだけどよ…名前とこうやって出掛けられる事なんてそうそうねえし…俺なりに楽しみにしてたっつうか、なんつうか…」
「大我くん…顔、赤いけど」
「は!?赤くねえよ!ほらっ行くぞ!!」
「あははっ」
ちょっとだけ頬を赤くした大我くんに手を引かれて、私たちは水族館に向かった。

水族館は家族連れやカップルでごった返していた。
逸れないように手はしっかりと握られている。
バッグも持ってやるって言われたけど丁重にお断りした。
大我くんのお祝いなんだからそんな事させられない。
「すげえ混んでるな」
「夏休みだしね」
「あんま離れんなよ?」
「うん、分かった」
ニッと笑った大我くんがなんだかかっこよくて、ちょっとだけドキっとしてしまった。
館内を順路に従って進みながら私たちはゆったりとした時間を過ごした。
少しでも大我くんが楽しかった、来て良かったって思ってくれればいいと思う。
手を引かれて最後にやって来たのは巨大水槽の前。
大小様々な魚が共存していた。
「すっごいね、大我くん」
「おお、マジですげえな…」
私たちは2人肩を並べて水槽を見上げながら感嘆の息を吐いた。
チラリと隣を見ると大我くんの目がキラキラと輝いていて、口元は弧を描いている。
純粋に楽しんでくれてるみたいで嬉しい。
場所ここにして良かった。
そう思って微笑んでいると不意に大我くんがこっちを見た。
妙に真剣な表情をして一歩近付き、近かった距離が更に近くなる。
「…」
「どうかした?」
「…いや…お前さ、」
「ん?…っ!?」
どんっ!!
話を聞こうと耳を傾けた時、後ろから来た人に肩をぶつけられて勢いよく前のめりに倒れ込んだ。
「名前!」
大我くんが繋いでいた手をぐっと引いてくれたのだけど、その瞬間それとは反対の腕を誰かに強く掴まれた。
「…よぉ、名前」
「!?あ、青峰!?」
「青峰くん!?」
私の腕を掴んで体勢を立て直してくれたのは青峰くんだった。
なんでこんな所に?
ポカンとしていると大きな青峰くんの横からピンクの頭が覗く。
「さつきちゃん!」
「名前ちゃん!こんにちはっ」
「おめえよ、さつき!腕掴むな」
「えー、いいじゃんちょっとくらい!」
「あ、青峰くん…ありがと、もう大丈夫だから、手…」
「あ?」
「おい、手離せ青峰。なんでお前がこんな所に居るんだよ」
「…へぇ、手ぇ繋いじゃってお前らデートかよ」
「お前だってそこのマネとしてんじゃねえか、っつうか早く手離せ」
「ああ?俺はコイツを助けてやったんだろうが」
「青峰くん!恩着せがましい事言わないの!」
「うるせえぞさつき」
「もう!名前ちゃん、ごめんね…あの、」
「え?あ、うん?」
「おいさつき!余計な事言うなよ」
「…分かってるよ」
「?」
「名前、もう行こうぜ…腹減った」
「あ、うん!そうだね!じゃ、さつきちゃん…」
お別れをしようと隣を見ると、瞳を潤ませたさつきちゃんが私をじっと見ていた。
凄まじい破壊力だ。
「ど、どうしたの?」
「ご飯、私たちと一緒に行かない?」
「「え?」」
大我くんと私の声が重なった。

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