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霞んだ青

スタンドに入ると、座ろうと思っていた辺りの席は既に満席。
仕方なく後方で立ち見する事にした。
辺りを見回してみたけど、先程思わぬ再会を果たした青い彼は見当たらない。
次の試合に控えてるのかな?
諦めてコートの方に視線を移す。
スコアボードを見ると第2Q残り約1分で49−39…誠凛、負けてる。
突然会場が騒めき出す。
何事かと覗き込むとそこには、相手チームと同じ黒のユニホームに身を包んだ先程の青い彼が居た。
「青峰っち、遅刻っすか」
「全く、ふざけたやつなのだよ」
近くに居た大きな男の子2人の会話が耳に入る。
青峰っち?遅刻…
青峰ってきっと彼の名前だ。
メンバーチェンジ後試合は再開され、大我くんとあの彼の攻防が繰り広げられた。
青峰くん…
大我くんが言ってた『すげえヤツ』って彼の事だったんだ。
気付けば10点差のまま前半が終了していた。
10分のインターバルに入り、会えるか分からなかったけど大我くんの居るだろう誠凛控え室に向かった。
ちょうど通り掛かった控え室に入る前の大我くんを見付けて駆け寄る。
「大我くん!」
「!?あ…名前」
「お疲れ様」
「おう。サンキュ」
「これ…食べて」
「ああ、悪いな…」
「あのさ。大我くんがこないだ言ってたのってさ」
「……さっき出て来たアイツ」
「そっか…こんな事しか言えないけど、頑張って」
「おう、ありがとな」
「じゃ、また上から見てるから」
大我くん、当たり前だけど真剣な表情。
なんとなく近寄り難いオーラを纏ってた。
思わず溜めていた息をふぅと吐いてとぼとぼと歩き出す。
青峰くんか…。
凄い迫力というか他を寄せ付けない様な雰囲気に、残念ながら昔の面影は無かった。
本当に彼なのかなという疑問が生じる程。
時間を確認しようと携帯を取り出した所で、突然現れた誰かと肩がぶつかる。
「わっ!ごめんなさいっ!大丈夫!?」
「あ、うん。こちらこそ、こんな所に突っ立っててごめんなさい」
女の子だった。
しかも凄く可愛い。
さらさらのピンクの髪に大きな目、おまけに…胸、でか。
あれ…そういえばこの子さっき相手校のベンチに居なかった?
「あ、誠凛の制服ですね!…もしかして、誰かの応援とかだったり?」
「え?あ、はい」
「!!それって、テツくんとか…じゃ、ないですよね?」
「テツくん?」
「あー!な、なんでもないんです!あはは!」
「はあ」
「じゃ!本当にごめんなさいね!」
「はい」
小走りで去ってしまった女の子を見送る。
呆気にとられてボーっとしていると声が掛かる。
「あ?お前さっきの水色パンツじゃん」
「!?」
「よぉ、また会ったな」
「あ…」
ピンクの女の子が出て来たのと同じ方向からやって来たのは、青い彼。
「レモンもうねーの?」
「…うん、さっき全部あげちゃった」
「あげた?…あー、お前、誠凛か」
「そう、だけど…」
「わりぃけどこれから俺お前のがっこのヤツら伸してくっから。悪く思うなよ」
「大我くんは、そんな簡単に負けないよ」
「はぁ?大我?ああ、火神か…お前アイツの女かよ」
「そんなんじゃないけど」
「へぇ…ん?お前…」
「何?」
「どっかで会ったか?」
「!?」
「んー」
「…人違いじゃない?」
「あー、まいいや。じゃあな」
「…バイバイ。楽しんで来てね」
「は?何お前、わけ分かんねえ」
興味が失せたとでも言うように去って行く彼。
ドキドキした。
もしかしてちょっと思い出してくれたのかもって思ったけど、なんだか怖くて気付いたら否定してた。
そういえば…さっきのピンクの子と同じ方から出て来たけど、もしかして彼女?
マネージャーみたいだし。
まあ、私には関係ないけど。
あんなに変わってしまって、何があったとか分からないし知る術も私には無い。
あんなに輝いてた青は見る影も無くなってしまった。
私の知ってる青い少年は、もう居ない。

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