コンビニでアイスを買った帰り道。
ふと顔を上げると、遠くからふらふらとこちらへ向かって来る人影。
目を凝らして見ればそれは見慣れた赤頭だった。
「大我くん!どうしたの!」
「え…あ、名前」
「フラフラじゃん!具合悪いの?」
「いや、ちょっと…練習し過ぎたっつーか」
「しょうがないなぁ。ほら、掴まって」
「は!?」
「肩貸すから、早く」
「ばっ、肩貸すって…潰れるぞ」
「大丈夫!体力には自信あるから」
「んな事言ったってな…あ、おいっ」
遠慮する巨体の腕を掴んで自分の首に掛け、半ば無理矢理家まで連行した。
「で、何かあった?」
「…」
大我くんは分かりやすい。
本人は隠してるつもりがあるのか無いのか分からないけど、すぐに表情や態度に出る。
たった数か月の付き合いで扱い方が分かってしまった…要は単純な男の子なのだ。
「別に、なんも」
「そっか。言いたくないなら無理に聞かないけど」
「…」
「ご飯食べる?」
「いや、いらねえ。…すげえヤツに会ったんだよ」
「ん?」
突然話す気になったのか、大我くんは自分の両手を見つめながら話し始めた。
「キセキの世代」
「あ、バスケの話!」
「ああ。今度のIH予選決勝リーグで戦う事になる相手」
「さっき?会ったの?」
「1人で練習してたら急に現れやがって…ちくしょう」
「…強かったんだ」
「ああ、すげえよ。動けなかった…」
「予選の決勝っていうと…ホントもうすぐだよね」
「…やってやる」
「大我くん」
「やってやるよ」
「ふふ。落ち込んでたわけじゃないんだ」
「だっ誰が落ち込むかよ!!あ、名前」
「ん?」
「試合、見に来いよ」
「え、私が?」
「ああ。まあ、バスケに興味ねえかもしんねえけど…お前に、見守ってて欲しい」
「…大我くん」
「ぜってえ、勝つ」
「分かった、見に行く」
「ほ、ほんとか!」
「バスケは下手だけど、見るのは好きだよ」
「ああ、下手なのは知ってる」
「あー、酷いなもう!」
「あはは、悪い…やっぱ飯食ってっていいか?」
「うん、いいよ」
大会を見に行く事になった。
大我くんのバスケは何度か見た事がある。
ただでさえ下手くそな私は彼のプレイを初めて見た時、あの身長、体格に見合った力強いプレイに圧倒されたっけ。
チームのメンバーにも頼りにされていて、確かこないだの試合でも大活躍したって黒子くんが言ってた。
そんな大我くんが適わない様な相手。
いったいどんな屈強な選手なんだろう。
試合は次の金曜日。
何か差し入れでもしようかな。
そんな事を考えながら夕飯を用意した。
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