「おかえり!!大輝っ」
「おー!ただいま!」
大輝がアメリカに行ってからちょうど1年が経った。
空港で出迎えた私に向かってゆっくりとした足取りで歩み寄る大輝。
また背が伸びたな。
体も一回り大きくなったよね。
『男の人』って感じになったな。
そんな事を考えているうちに大輝が私の目の前に…
持っていた沢山の荷物を横に放って、私を力一杯抱き締めた。
「ふふ、おかえり」
「んだよ名前、随分余裕じゃねーか」
「余裕なわけないよ、バカ」
「…キスしてえ」
「ここ日本だからね」
「やだ」
「これからいつでも出来るでしょ」
「やだ、今」
「ワガママ…顔近い近い」
「早く」
「…もう」
「ん」
ざわざわと騒がしいはずの周りの音が消える。
文句を言いながらも本当は嬉しかった。
大好きだ。
バカで単純で優しくて強引な大輝が。
重なり合った唇はだんだんと深くなって…
羞恥を捨てて、精一杯の背伸びをして大輝の首に手を回した。
空港を出て大輝に手を引かれてやって来たのは、全く予想していなかった場所だった。
『青峰』と書かれた表札を見て固まる。
何の躊躇いもなく私を家に入れようとする大輝を思わず引き留めた。
「大輝?」
「あ?」
「な、なんで大輝の家?」
「いーだろ別に」
「ご両親は?」
「多分居る。つか居る」
「ええ!?」
「なんだよ」
「わ、私心の準備が…」
「は?なんでだよ」
「まだ会った事も無いし」
「いーから来い。アイツらに言う事あんだからよ」
「私はいいよ!また日を改めて、さ」
「お前も居ねーとダメなんだよ」
「ええっ?」
ぐいぐいと手を引かれて玄関に押し込まれた。
「おら、上がれよ」
「大輝ー?帰ったのー?」
「っ!」
「おー」
逃がすまいとばかりに手を掴まれてリビングに連れて行かれた。
そこに居るのは勿論大輝のご両親。
『まあ!大輝ったら!』とお茶目な反応を見せてくれたお母さんにホッとする。
超緊張して挨拶を交わした私をソファに座らせ、自分もすぐ隣に腰掛けた。
そしていつもの大輝らしい口調でご両親に話した内容に、私はポカンとしてしまった。
だって…
「俺、コイツと一緒に住むから」
「え!?」
そんな話、聞いてない。
いきなりこんな事言ってご両親だって…。
帰国早々大輝がやらかした。
「ちょっと!大輝!?」
「まー、ちょっと黙って聞いとけ」
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