「ダイキ、エッチ!」
「!!ノア!?」
裸で抱き合ったまま眠ってしまった私たちを発見したのは、ついさっきお世話になったばかりのノア。
大輝が部屋のドアを開けっ放しにしていたから、リビングに入った瞬間に見えてしまったらしい。
も、申し訳ない。
というか、恥ずかしい!!
一方の大輝は1人キレ出した。
「ノア!てめえ名前の裸見てねーだろうな!!」
「ン〜、キレイなセナカだけ〜」
「うああああ!」
「背中!?ケツは!!」
「ダイキのテ、ジャマ」
「ちょ!人のお尻触りながら寝てたのかお前はっ!!」
「あ?結果的に見られなかったんだからいーだろ」
「ダイキとナマエ、オモシロイ」
「「からかうなっ!」」
やっぱり大輝はいつもノアにからかわれてたんだ。
そして何故か私もノアにからかわれる対象になってしまったらしい。
3人で一緒に夕飯を食べて寛いでいると、ノアが攻撃を仕掛けて来る。
私が褒め言葉に弱い事を知ると、相変わらずのストレートな物言いで私を辱めに遭わせた。
「ナマエ、リョーリジョウズ!」
「あ、ありがとう」
「ソウジもカンペキ!」
「あはは」
「カワイイ、ヤサシイ」
「い、いや…」
「イイオヨメサン」
「もう止めて下さいぃ」
「ボクとケッコンする?」
「ええ!?」
「ノアぶっ潰す!!」
「ジョーダンツウジナイ、ダイキダサイ」
「ぁあ?」
こんな感じで、終始ノアのペースで話が進む。
まあ…文句を言いながらも大輝はノアの事を信頼して、なかなかいい友好関係を結べているみたいで安心した。
ノアがルームメイトで良かったと思う。
「ナマエ、いつカエル?」
「あ、えーと…明日」
「明日!?」
「ハヤイネ」
「残念だけど」
「…もうちょい居たっていーだろ」
「駄目」
「はぁ?なんでだよ」
「だって…」
「んだよ、ハッキリ言え」
「…」
「言えよ!」
「…あんまり長く一緒に居ると…帰りたくなくなるし」
本音だ。
夏休みはまだある。
でも帰らなきゃ。
1泊なんて弾丸ツアーだけどそれは自分への戒めなのだから。
何泊もしたらずっと一緒に居たくなって、また別れるのも辛くなって…本当に帰れなくなってしまう気がしたから。
私の返答に最初に反応を示したのはノアだった。
「ナマエ、カワイイ」
「え…」
「Japanese!オンナノコ、カワイイ!!」
「え、いや…えぇと…」
「ダイキじゃモッタイナイ!!」
「の、ノア…っていうか大輝はどうした…の…」
全く会話に参加して来ない大輝を不思議に思って、ノアから視線を移した。
そこには…
「…」
「えええっ!?」
「ダイキ!マッカ!!」
頭から湯気でも出そうなくらい顔を真っ赤にして固まっている大輝が居た。
どうやら帰りたくない発言が効いたらしい。
「う!うるせーぞノア!!」
「ハッハッハ!!」
「笑ってんじゃねーよ!」
「ダイキもカワイイ!」
「っぷ」
「おい!名前も笑ってんじゃねーよ!お前のせいだろーが!」
「っふふ、それは失礼しました…ふはは」
「…お前、マジで今日寝かさねえからな」
「イヤア!ダイキのエッチ!!」
「お前はいい加減にしろノア!」
「ふふ、あはは!!」
からかわれているのはさて置き。
大輝の元気な姿が見られて嬉しい。
楽しい。
幸せ。
来て良かった。
翌日、私は予定通りに帰国。
空港で駄々を捏ねる大輝を宥めるのは一苦労だった。
…凄く可愛かったけど…凄く。
すっかり渡しそびれていた誕生日プレゼントはその時に渡した。
『はい、改めて…誕生日おめでと』
『…いらねーよ。お前が残れ』
『っく…何それ超絶可愛いけどそれは駄目』
『ケチ』
『何とでも言って。早く開けてよ』
『……』
『どう?』
『…悪くねー』
『ふふ。それ、』
黒いリストバンドと手作りのお守り。
お守りの中身は企業秘密だ。
どうしても辛くてしんどくて耐えられなくなった時に見なさいって言った。
『俺がそんな事になるわけねーだろ。ま、サンキューな』
ニッと笑ってお守りを撫でた大輝の顔は凄く嬉しそうな表情。
うん、やっぱり大好き。
ちょっと長めのキスをして、手を振って別れた。
あと約半年。
頑張れる。
「名前、浮気すんじゃねーぞー!!」
「だからしません!!」
prev / next