「お届け物です」
「はーい(なんだろ?)」
今日はちょっとした特別な日で、奏とテツくんと一緒に楽しい時間を過ごしてついさっき帰宅した所。
テツくんは大学のバスケチームで、良い仲間に恵まれて楽しくバスケをやっているらしい。
凄く嬉しい。
夕方からそのバスケの試合があるからって事でサヨナラした。
勿論奏も応援に着いて行った。
相変わらずテツくんと奏は仲良くやっていて微笑ましい。
で、今だ。
お届け物ってなんだろ?
ディスプレイには大きめの包みを抱えた配達員さん。
ドアを開けるとその包みが目の前に差し出された。
「お荷物です、どうぞ」
「ご苦労様です」
「外装すぐ破けるんで中身確認して貰っていいすか?」
「え?ここでですか?」
「そういう指定なんで」
「えー!差出人誰ですかね?」
「とりあえず開けて貰っていいすか」
「…なんか怖いけど、配達員さんも居るしいっか」
よく分かんないけど周りの簡易包装だけ開けろって事なので従う事にする。
ちょっと重いので配達員さんに持つのを手伝って貰って。
そしてバリバリと包みを開けて現れたのは…
「うわ!!花!!しかも薔薇って…ええ!?誰!?」
包みを開けた事によって大きく広がった、目の前いっぱいに広がる真っ赤な薔薇。
大混乱だ。
今時真っ赤な薔薇の花束とか送って来るような知り合いなんて全然心当たりないんだけど!!
「あ、あの…差出人って…」
薔薇の向こうで最早隠れて見えない配達員さんに尋ねると、思いもよらない返事が返って来た。
ちょっと待って、何これ!
「…もう俺の事忘れたのかよ、名前」
「なっ!なんで!?え!?嘘!!」
「嘘ついてどーすんだバカ」
「だって!…なんで!?なんで帰って来てんの!?」
「お前の誕生日…祝いに来た」
涙腺崩壊だ。
今私の目の前に居るのは会いたくて会いたくて仕方なかった人。
普通に配達業者だと思ったし、かなり深めの帽子被ってたから気付かなかった。
背は高いなとか、随分ぶっきら棒な話し方だなとか思ってたけど。
こんなのってズルイ!!
「こんな怪しい配達員あっさり信じるとか、お前無防備過ぎだぞ」
「ば、ばかじゃないの!ホントにっ」
「相変わらずだなお前…とりあえず抱き締めさせろ」
そう言って花束を玄関に放って家の中に押し入り、未だ半信半疑の私を力一杯抱き締めた。
ああ、大輝だ。
ぎゅうぎゅうと私を抱き締めるその人は、紛れもなく私の大好きなあの大輝だ。
「大輝っ」
「名前」
「恥ずかしいヤツ!今時真っ赤な薔薇の花束なんてっ」
「…俺は会いに行くだけだっつったのに。チームメイトのヤツがやれやれうるせーからよ」
「もうっ…でも、ありがと」
「おー」
「会いたかった」
「俺も。死ぬかと思った」
「っふふ」
「笑い事じゃねーよ」
大輝の顔がゆっくりと近付く。
相変わらずの鋭い瞳と目が合った。
ちょっと照れ臭い。
おデコとおデコをくっ付けて、
そっと目を閉じて、
キスをした。
シャラっと首に掛けられたチェーンを揺らし、そこに通されたリングを触りながら大輝が言った。
「浮気してねーだろーな?」
「あのね…私がそんな器用な事出来ると思う?」
「…それもそうか」
「それはそれでなんか腹立つ」
「お前が言ったんだろ」
いつもの感じ。
何も変わってなくて安心した。
私の大好きな大輝のままだ。
足の間に私を座らせて遠慮なく圧し掛かって来る。
これも変わらない。
それが嬉しい。
「…お前、ちょっと太ったか?」
「は!?」
「なんかこう、抱き締めた感じがよ」
「なっ!超失礼!太ってません!」
「ん?あー、太ったっつうか女っぽくなったって感じか」
「はぁ!?」
「やわらけーし」
「こ、こら!触るな!」
「いーじゃねーか。俺のだし」
「ふぎゃ!」
「相変わらず色気ねーな」
「ちょっと!普通に胸触るな!!」
「おいおい、おっぱいちょっとデカくなったんじゃね?」
「はい!?」
「誰かに揉ましてねーだろーな!」
「するか!!」
「んじゃ、俺が確認してやっか」
「は!?」
「全身隈なく、な…」
「ちょ、ぎゃ!!」
ほら、変わらない。
大輝のペースだ。
そのまま私は大輝が帰らなきゃならない時間まで離して貰えなかったのは…言うまでもない。
薔薇はしょうがないから部屋に飾ってやった。
違和感有りまくりだ。
少しでも長生きさせようと一生懸命頑張った自分がちょっと可愛いとか思ったり。
「またな名前。いい子にしてろよ」
「この痕…どうしてくれんの…」
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