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3OT

「顔怖いよ、大輝」
「お前こそ変な顔してんじゃねーよ」


私たちは今、空港の国際線出発ロビーで向かい合っている。
変な顔だなんて失礼過ぎる。
せっかく笑っていってらっしゃいしようとしてたのに、大輝がそんな顔するから私の顔も崩れたんだ。
「心配そうな顔しちゃって…私の事そんな信用出来ないの?」
「んだよ、その言い方は。別に心配してねーよ」
「んじゃ何ですかその情けない顔は」
「はぁ?情けない?お前、別れ際だってのにそんなんしか言えねーのかよ」
「しょうがないじゃん、情けないへっぽこ顔してる方が悪い」
「あー、あったま来た!可愛くねーな!!てめーいい加減にしろよコラ」
「何が?意味分かんないし」
心底可愛くないと思う。
大輝の言う通りだ。
ここでバイバイしたら1年も会えなくなるって言うのに、まともに会話も出来ないなんて。
我慢していた涙が、じわりじわりと瞳を覆い始める。
「だいたいお前は女のくせに、…なっ、名前!」
「何」
「何、泣いてんだよ」
「泣いてないし」
「は?どう見たって…」
「ぶぁかっ!!笑顔で見送ろうと思ってたのに、こんのバカ峰!!」
「はぁ!?ふっざけんなよ!」
「別にふざけてなんかいませんー!」
「ふざけてんだろーが!!」
『ただいま○○便の最終ご搭乗案内をしております。ご搭乗の方は至急○番ゲートまでお急ぎ下さい』
「「!!」」
ゆったりとした口調のアナウンスが、私たちの不毛な言い争いをピタリと止めさせる。
いよいよ私の涙腺は限界だった。
「ふ、っう…」
「ば、ばか!泣くんじゃねーよ!」
「ごめっ、ぅ」
「だー、くっそ」
「へぶっ!!」
チッと舌打ちをした大輝が私を力一杯抱き寄せた。
がっちりと私を抱き込んで、身を屈めて頬を摺り寄せる。
私の涙が大輝の頬にじんわりと浸み込んだ。
「つめて…」
「ごめん」
「っん…、しかもしょっぺー」
「…それ私のせいじゃない」
「名前」
「ん」
「1年待ってろ」
「…」
「んで、2年も待った俺と同じ気持ち味わってろバァカ」
「…もう」
「あークソ、ちげーんだよ。そーじゃなくてよ」
「ん?」
「とにかく、いい子に待ってろって事」
「…うん」
「浮気すんなよ」
「ん」
「夜遅くに出歩くな」
「ん」
「合コンも行くな」
「ふふ。もう何回も聞いた」
「うっせ」
「他には?」
「……すげぇ好き」
「っん!!」
耳元で囁かれてすぐ、唇が重なった。
背伸びをして、大輝の大きな背中に手を回した。
腰に回された手に力が入り、これ以上くっ付けないくらいにピタリとくっ付いた。
ここが公衆の面前だとかそんなのどうでも良かった。
言葉は上手く伝えられなかったけど、だからこそ精一杯のキス。
名残惜しいとばかりにちゅぅっと音を立てて離れれば、もう一度強く強く抱き締められた。
苦しいくらいに。
「名前」
「大輝…好きだよ」
「ん。それ、帰って来たらまた聞かせろ」
「うん」
「いっぱいな」
「うん」
もう一度、軽く触れ合うだけのキスをして離れる。
私の頬を一撫でした大輝は背を向けてゆっくりとゲートを通過して…
ニッと歯を見せる私の大好きな笑顔を向けた。


「いってらっしゃい、大輝」
「おー。ちょっと行って来る」

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