「…眠れねー」
「ふふ、大輝が眠れないなんて明日は雹が降るね」
私たちは布団に包まって抱き合ったまま眠れずに居た。
笑って冗談を零せば鼻を咬み付かれた、結構痛い。
はぁ…明日からまた仕事なんてあんま考えたくない。
今は出来るだけ沢山一緒に居たいのに。
「…明日、休もうかな」
「は?何言ってんのお前」
「…なんとなく」
「なんで休むんだよ」
「…筋肉痛になる予定だし」
「ぶは!やっぱ遅れて来んじゃねーか」
「笑うなバカ」
じゃれ合う時間が愛おしい。
大輝の笑顔が、声が、全部が愛おしい。
会話が途切れると大輝の大きな手が私の頬を包んだ。
頬を擦ってから長い指で唇をなぞる。
「お前みてーな女のめんどう見れる男なんて、俺くらいしかいねーだろ」
「…なんなのいきなり」
甘い言葉を囁かれるのかと思えば悪態だ。
凄く大輝らしくて笑える。
「こんなじゃじゃ馬、貰い手なんかねーよなぁ」
「スイマセンね、こんなんで」
「ぶはは、拗ねんなよ」
「拗ねてないし」
「ま、貰い手は俺だけでじゅーぶんだろ」
「……」
「ありがたく思えよな」
「…なっ」
「んだよ、嬉しくねーのかよ」
「何今の!!まさか!」
「は?めんどくせーな、お前は俺だけ見てりゃいいっつってんの」
「っ!!」
「まー、他のヤツんとこ行ったらそいつぶっ殺すだけだけど」
「…なんか冗談に聞こえない」
「っつーことで、ちゅーしろ、ちゅー」
「どういう事だ!!」
「こーゆー事だっつの」
「意味不めっ、ん!」
キスされた。
長く深く短く軽く、沢山沢山した。
何度も何度も、胸が苦しくなる程の優しいキスに眩暈がした。
そのままいつ眠ったか分からない。
大輝のキスに意識を持って行かれて、大きな体に包まれながら幸せな気持ちのままいつの間にか眠りに落ちていた。
…夢だ。
嫌だ、見たくない。
おかしいじゃん、なんで今日なの?
そんな私の思いも虚しく、夢は勝手に進み始める。
『青峰っち!!黒子っち!!』
『青峰だと?黒子もか…お前たち何処で何をしてっ…寝ているのか』
『なんで皆地べたで寝てんのー?意味分かんないんだけど』
『涼太、大輝とテツヤはキミと同じ場所から戻って来たという事でいいのかな』
『…そうッス、多分』
『なんで黄瀬ちんがそんな顔してんのー?』
『だ、だって!!…なんで、戻って来ちゃったんスか、青峰っち…』
『涼太に記憶があるという事は、きっと大輝やテツヤにも残っているんだろうね』
『えー、夢でも見てたんじゃないのー?』
『同感だ。そんな非現実的な事俺は信じん』
『緑間っち酷いッス!!青峰っちの前で絶対そんな事言わないで下さいッス!!』
『黄瀬ちんなんか暑苦しー』
『よせ敦。涼太も何か思う所があるんだろう』
『っう』
『あ、青峰っち!!』
『…は?黄瀬?』
『おかえり、大輝』
『赤司?……!!名前!名前は!!』
『名前?誰なのだよ』
『あー、写真のコじゃないのー?』
『っんでだよ!!くっそ!!…名前っ』
『…大輝。なんだか、いい顔になって帰って来たね』
『意味ねーよ、アイツが居なきゃ…』
夢が終わる。
目を開けたくない。
だって目が覚めたら…
『名前』
「大輝」
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