「大輝!!」
「あ?んだよ、でけー声出すなよ」
ソファに座って、奏から聞いた黒子くんの体が透けたっていう話をした。
大輝はその間何も言わなかったけど、私の体に回された手が一瞬強くなったから…きっと動揺したんだと思う。
その後すぐだ。
大輝の手が透けて見えたのは。
「…マジかよ」
「っ」
透けた指先は感覚はあるらしい。
グーパーだって出来るし私に触れて体温だって感じる。
『こんなもんへーきだ』なんて言って後ろから思い切り抱き締められたけど、その手は少しだけ震えていた。
「たーだいまッスー!ってあああ!!」
「…おかえり、涼太」
「るせーよ、黄瀬」
涼太に気を取られて目を離した次の瞬間には、大輝の手は元通りになっていた。
帰って来た涼太にも特に変化は見られない。
「何2人でラブラブしてるんスか!!」
「ああ?邪魔すんじゃねーよ」
「大輝…ほら、もうお風呂作るから」
「あ!名前っち!俺が作ってくるッス」
「さすが涼太!偉い!!」
「えっへへ!お安い御用ッス!」
「うぜー」
「大輝、そういう事言わない」
「俺、名前っちのとこに落とされて良かったッス!」
「え!な、なんで?」
「優しいし、毎日楽しいし!俺名前っちの笑顔好きッスよ!勿論本体まるっと好きッスけど!」
「ああ?なんだと?黄瀬」
「なんスか?青峰っち」
「ほら!喧嘩しないの!!」
大丈夫。
いつもの感じ。
笑えてるし声も震えない。
大輝からそっと離れれば、名残惜しいとばかりに届かなくなるまで手が着いて来た。
そのままソファの背凭れに全身を預けて目を手で覆う。
「だぁー!っクソ…」
大輝の声が響いた。
…私たちはあとどれだけ、一緒に居られるのだろうか。
それから2日後の金曜の夜。
私は夢を見た。
『赤ちーん、黄瀬ちん見つけたー』
『ん?…見つけた?』
『黄瀬!お前いったい今まで何処にっ…!?』
『真太郎、静かにしてやれ。敦も、そこに寝かせてやれ』
『んー。怖い夢でも見てんのかなー』
『…泣いているのだよ』
『う…好き、だった、ッス…』
『黄瀬ちんてば夢で誰かに告ってんのー?』
『…おかえり、涼太』
『…赤司?』
『なんでもないよ。さあ、残りの2人は…どうしただろうね』
「っ!!」
目が覚めた。
久々に見たあの夢には涼太が居た。
いつの間にか大輝の腕に包まる様にして寝ていた私は少し身動ぎして、それからゆっくりと反対側を振り返る。
そこに、いつもの様に居て欲しかった。
「っ、大輝…涼太が…」
「ん…ど、した?」
「居ないっ」
寝惚け眼だった大輝も弾かれた様に飛び起きて、すぐに私を抱き締めた。
その手は少しだけ震えてる。
嘘だと思いたくて家中探して、奏とテツくんにも知らせて、ストバスコートにも行って…どれだけ探しても涼太は見つからなかった。
キラキラと輝く黄色い髪の男の子が、消えた。
「名前、泣くな」
「っうん」
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