「夢?えろいヤツか?」
「バカ。それしか頭にないわけ?」
帰宅後、極度の疲労(第2Q参照…)後にお風呂を済ませて、今は大輝とベッドに入っている。
大輝にしっかり抱き締められているけど、いつもなら眠くなるのにやけに目が冴えてしまって眠れない。
なので私がよく見ていた不思議な夢の話をしてみようと思い、冒頭に至る。
「キセキの子たちが出て来るんだよ」
「あ?キセキ?俺か?」
「ううん、大輝とテツくんは出て来ない」
「は?俺ら以外かよ」
「そう。赤司くんとむっくんと真ちゃん」
「あ?黄瀬は?」
「途中まで居たんだけど、いつからか居なくなったよ」
「なんでそんな夢見てんだよ」
「私が知りたいよ。しかもさ、たまに見る夢なのに毎回話が続いてるっぽいんだよね」
「続きが見れるとか、そんな都合のいい夢あるかよ」
「だよねー。だいたい高校生のキセキが一堂に会してるのが異様だわ」
「意味分かんねー」
「あ、そういや東京に皆が集まったからストバスするみたいな事言ってたような…」
「…おい、それマジかよ」
「え?うん。…どうかした?」
「俺もそれで赤司に呼ばれたぞ」
「え?」
「で、待ってる間昼寝して…起きたらこっちに居たし」
「ちょ、ちょっと…これ、何か関係あるの?」
「俺に分かるわけねーだろ」
「…」
「なんだよ、静かだな」
「…」
「だー、もう難しい事考えんの止めようぜ」
「…」
「おい名前!」
「…だ」
「あ?」
「帰っちゃ、や、だ…」
「っ!?」
「え、…え!?あ、いや!なんでもないっ」
「お前…」
「ご、ごめんごめん!寝よう!ね!」
無意識だった。
気付いたら『帰っちゃ嫌だ』と零していた。
夢と話が繋がって、これをきっかけにもしかしたら大輝とテツくんが元の世界に帰れる方法が見つかるかもしれないって思ったら…。
自分で発した言葉に自分で戸惑って、深く布団を被って顔を隠す。
「名前」
「…」
「おい名前」
「…」
「さっきの、俺は結構嬉しかったけど?」
「!?」
突然何を言い出すかと思えば、嬉しかった?
何が?さっきの言葉?
「『帰っちゃやだ』ってやつ」
「なっ!なんでッ」
「向こうもそれなりだったけどよ、俺はこっちの…お前が居る世界の方が好きだぜ?」
「…大輝」
「ま、すっげー色々苦労すっかもしんねーけど?いまんとこ帰る気は起きねーな」
「っ」
「働き口も見つかったわけだし?っつー事で、勝手に凹んでんじゃねーぞ名前」
「っもう、バカのくせにっ!!」
「ああ?なんつったコラ」
「ふ、あははは!」
「もう一発ヤラれてーのか?」
「激しく遠慮しときます」
「即答かよ!…はぁ、もう寝んぞ」
「ん、寝よ」
「んじゃほれ、おやすみのちゅーは?」
「はい、ちゅ」
「っ!?!?!?」
「っふ。あっはははは!」
「お、おまっ!何マジでしてんだよっ」
「あれ、大サービスしたのに何この言われ様は」
「…あんま実感無かった、もっかい」
「はい、ちゅう」
「っ!?!?な、なんなのお前」
「今日の私はご機嫌なのだよ」
「その言い方止めろ、犯すぞ」
「んー、それは困る」
「こっち向け」
「ん」
「素直すぎてキモイ」
「あ、凄い失礼」
本当は還さなきゃいけないって分かってる。
だけどこんなにも好きになってしまった気持ちは止められなくて…
出来ればこの先もずっと一緒に居たいって、強く思ってしまった。
不謹慎にも嬉しかった。
大輝の言葉が。
『お前の居る世界の方が好きだぜ』
嬉しくて嬉しくて、行動が素直になってしまったのは自分でも想定外。
大輝の鋭い瞳が近付き、唇がそっと触れ合った。
「…ん」
「ん、ふ」
祈る様に、繋ぎ止める様に唇を合わせた。
「おやすみ、大輝」
「おー。おやすみ、名前」
『赤ちん、ありがと〜』
『ああ、好きなだけ食べるといい』
『赤司…買い過ぎなのだよ』
『敦を待たせるには最低限これくらい必要だろう』
『黄瀬も居なくなったし、これからどうするのだよ』
『もう少し様子を見たいんだ』
『んー、俺も待っててもいいよー』
『ほら、写真がまた増えているだろう』
『…だからこの現象が気持ち悪いのだよ!!』
『気持ち悪い?興味が湧くじゃないか』
『それは赤司だけなのだよ』
『さて、涼太はいったいどうなったのかな?』
『だから黄瀬はきっとその辺でふらふらヘラヘラとしているに違いないのだよ』
『本当にそう思うかい?』
『…赤司』
『どっかに飛ばされちゃったんじゃなーい?ぽーんって』
『紫原、悪い冗談は止めるのだよ』
『いや、真太郎…強ち、間違ってはいないんじゃないかな?』
「んー、名前」
『もしこの夢に大輝が出て来たらそれは…』
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