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火神



【ラーメン屋】

「いらっしゃいませ!!ってあ、名前!」
「やっほー!来ちゃった」
「…あ、あんま来るなって言ってるだろ」
「えー、いいじゃん美味しいんだもん!ってわけでみそラーメン1つ」
「…へーい」
「覇気が無いぞ覇気が!」
「うっるせ」
私の彼氏はラーメン屋さんだ。
毎日汗と油にまみれながら一生懸命働いてる。
恥ずかしいから来るなって言われてるけどそんなの無視無視。
大我の作るラーメンは絶品だ。
というか料理全般得意なのに、なんでラーメン屋になったかは未だに謎だ。
オムライス作るの上手だしてっきり洋食系に行くと思ってた。
ゴンッ!
あっという間に目の前に器が置かれる。
「ほら。さっさと食って家で待ってろよ」
「お客様に対して失礼だねキミ」
「…(あとでおぼえとけよ)」
「いっただっきまーす」
大我のジト目はとりあえず放置して、アツアツのうちにいただく。
うん、美味しい!!
私はこの時間お客さんが少ないのを知ってる。
敢えてそこを狙って来てあげてるというのに、毎回嫌な顔をされるのだけど…それは愛情の裏返しと捉えたい。
「ありがとうございましたーっ!!」
半分食べ終わる頃には、店内に私以外のお客さんは居なくなった。
大我の仏頂面が少しだけ柔らかくなる。
「お前な、家で作ってやるっていつも言ってるだろ」
「だって働く大我が見たいんだもん」
「ぶっ!!おま、…はぁ」
「いいでしょ?作業の邪魔はしてないし、しっかり代金も払うし、お客さんが居る時は大人しくしてるし」
「そういう問題じゃねえんだよ」
「じゃあどういう問題?」
「っだー!お前が居ると気が散るんだよ」
「酷い!!」
「だ、だからそうじゃなくて!お前!いつも1人だから何回か男に声掛けられてるだろ!」
「…?ああ、そんな事もあったかも?」
「忘れるなよ!何回もあるだろうが!」
「それがなんなの」
「…おちおち注文も取れねえよ」
「やだ大我ちゃん、心配してるの?」
「なんだよ大我ちゃんて」
「大丈夫だよ、私は大我一筋だから!」
「ぶーっ!!!っだからそういう事をこういう所で言うなって!!」
「あはは!可愛い!っていうかさ、大我はなんでラーメン屋さん?」
「は?」
「どうしてラーメン屋さんになったの?」
「な、なんだよ急に」
「だってさ、私のイメージは洋食屋さんだったわけよ」
「洋食?」
「ほら、オムライス上手でしょ?」
「そうか?普通だろ」
「それ私に喧嘩売ってると捉えてよろしいか」
「よろしくねえよ」
「ねえねえ教えて!気になって夜も眠れない」
「はぁ………お前だよ」
「え?」
「だから、理由はお前!」
「me?」
「お前高校の時言っただろ?…ラーメン屋の彼氏が居たら幸せーとか」
「…」
「って覚えてねえのかよ!!」
「い、言ったようなそうでないような」
「言ったんだよ!間違いなくな!」
「…で、ラーメン屋になっちゃったって事?」
「………」
「ぎゃーん!大我ちゃん可愛いどうしよう!!」
「ばっ!!は、離せこら!!」
「ふふ、私大我のそういうとこ好きだよ」
「…お前、覚えてないくせによく言うな」
「大好き!!」
「…」
「大好きは?」
「…す、好きだよ俺も」
「へへ!」
「ばかやろ」
「ごちそうさま!!早く帰って来てね!」
「おー」
お店を出て少しした所で立ち止まる。
私、顔赤いかも。
ふざけてからかっちゃったけど…すっごく嬉しい。
朝は早いし帰りは遅いし、汗まみれで油まみれで、キスだってたまにラーメン風味だけど!
なんだかんだで私を大事にしてくれる大我が大好きだ。

そう。
私の彼氏は、照れ屋で一途なラーメン屋さん。



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