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 わたくし達はよく似た兄弟であると、もっぱらの噂でございます。まるで鏡合わせのよう。よくそう表現されます。確かにわたくし達の顔はそっくりでした。表情と衣服、声こそ大きな違いがあれど、服を揃え、無表情で立っていたら、おそらくは見分けをつけることは難しいと思います。
 そっくりな兄弟。鏡合わせの双子。まるで生き写し。今日もそんな囁きが、見事わたくし達の元へ辿り着いた実力者たちから零れました。
 ……ああ、彼らもわかっていない。いや、わかるはずもないのでしょう。何せ彼らはわたくし達の表面しか見ていないのだから。もちろん彼らに限らず、どなた様も。

 わたくしと双子の兄弟は、決してそっくりなどではない。まして鏡合わせや生き写しなど以っての外。


 わたくしはあの子のように綺麗ではない。あのように無邪気に笑うことなど出来はしない。わたくしはあの子よりもずっとずっときたない存在だ。これでどうして、そっくりだと、鏡合わせと言えるでしょう。

 たったひとこと。ほんの微笑。それを今しがた出逢ったばかりの赤の他人に向けられることが、わたくしは許せない。…なんて嫉妬深く、醜い。


「ノボリ、大丈夫?」
「……クダリ、」
「ノボリ、顔色悪い…心配。休んで…?」

 わたくしの片割れはそう言って、不安そうにわたくしを見つめました。
 バトルはとうに終わり、お客様は既にお帰りになっていました。わたくしとしたことが、ついぼんやりしていたらしく…兄弟に心配をかけてしまうとは。情けない姿を見せてしまった。

「ノボリが倒れたりしたら、ぼく、悲しいよ…無理はしないでね…?」

 心やさしき兄弟は、そういってわたくしの顔を覗き込みます。…穏やかでまっすぐな澄んだ瞳。白く清浄な、わたくしとは正反対の色。

「…わたくしは無理なんてしていませんよ、クダリ」
「でも…」
「その心遣いはブラボーですが、心配のしすぎはいけませんね。わたくしの言葉が信じられませんか?」

 少し口の端を持ち上げるだけの笑みを見せてやると、クダリも困ったようにはにかんで、へいきならいいんだ、と呟きました。
 わたくしの片割れ。たったひとりの兄弟。まるでわたくしと似ていない、うつくしい、子供のように無垢な半身。

「…クダリ。ひとつ、お願いしても良いですか?」
「なあに?」
「少しだけ……こうさせてくださいまし」

 白いコートの片割れをそっと抱き寄せると、えへへ、と耳元で彼が笑うのがわかりました。いっぱいこうしていていいのに、と背中に回された腕のぬくもりを、わたくしは確かに感じました。

「…ずっと、」

 ずっと二人きりでこうしていられたら、どれだけ幸せでしょうね。
 とても彼には見せられない醜い独占欲を胸の内側でくすぶらせながら、わたくしは、無垢なクダリを強く抱きしめた。





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ノボリさん難しい




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