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 冬。風呂が恋しい季節になった。けれどただ風呂に入るというのも味気ないので、入浴剤か何かを入れようと思う。
 どうやら風呂好きらしい十代にそのことを言うと、あれがいいだのこれがいいだの色々とアドバイスされた。疲れが取れるとか取れないとか、これは色がどうだとか……正直なんでもよかったが、十代にはそうでもないらしい。妙なところで妙なこだわりを見せる男だ。


 結局、十代がよく使っていると言っていたものを買って帰った。洗面所に置いておいたはいいが忘れて、さあ湯船につかろうかと言うところでようやっと思い出した。寒いのを一瞬我慢して扉を開け、入浴剤を手にとってすぐ引っ込む。適当な量を蓋に入れて、それを遠慮なく湯船に落とした。何かの実験でもしているかのようだ。粉は一瞬でとけて、ぶわっとお湯の中に広がる。手でかき混ぜると、あっという間に鮮やかなオレンジ色に染まった。
 後はいつもの調子で普通に湯船につかる。感覚としては普段と変わりない。違うのはお湯が透明じゃないことと、ただ、強い香りがするということだけ。たった、それだけだ。
 手のひらでお湯をすくって、顔に近づける。いっそう強く、香りが鼻腔をくすぐった。


「うえ、柚子くせえ」

 ぱしゃり。手のひらを開けばお湯が当然重力にしたがって落ちた。
 強い柑橘の香り。

「……くそ、十代のにおいがする」

 これオススメだぜ、そうすすめてきた彼も、確かこんな匂いだった。






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