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(学パロ教師×生徒)




 データをUSBメモリに保存した後、パソコンの電源を落としてそれを引き抜く。広げていたノートや資料類を片付けて鞄にすべてしまってから、遊星は立ち上がった。そしてかれこれ一時間以上、何をしているのかパソコンの画面と睨みあっている教師に先ほどデータを保存したメモリを突き出す。先生、と声をかけるが気づく様子はなかった。

「……ブルーノ先生」

 もう一度呼ぶと、今度こそ視線がパソコンの画面から遊星に向けられた。ブルーノはぱちくりと瞬いた後、慌てて立ち上がり、終わったんだね、お疲れ様と微笑みそれを受け取った。
 遊星は無言で頷いてから、壁にかけられた時計にちらりと目をやる。針は既に6時近くを指していた。日が落ちるのが早いこの季節、生徒は6時のチャイムが鳴るまでに下校することが定められている。早く帰ろう、遊星はそう思い、ブルーノが早く帰宅の許可をくれないものかと思った。
 授業時間内で組み終わるはずだった簡単なプログラム。授業中ただ一人組み終わらなかった遊星はブルーノに呼ばれ、単位のために補習を受けることになった。もっとも機械にめっぽう強い遊星だ、さしててこずることもなく、遊星は淡々と作業を終えて今に至る。

 ブルーノはメモリを教師用のパソコンに差すと、再び遊星の顔を見て、ふわふわした穏やかな笑みを浮かべた。

「お疲れ様、不動君。チェックしておくから、帰っても大丈夫だよ」
「……ありがとうございました」
「いやいや、君みたいに優秀な生徒の単位を僕のせいで落とさせちゃうのも、何だしね」

“僕のせい”?
 その言葉の意味がわからず、目を丸くする遊星。ブルーノはそんな遊星の反応に、堪えきれないという様子でくすくすと笑い声をもらした。

「だってほら……僕のことを見てたせいで、授業が疎かになっちゃっていた……なんて、笑えないでしょう?」
「っ……!」


 目に見えてわかる動揺の仕方だった。遊星は頬を赤くして、腕で口元を覆うようにする。驚きに見開かれた瞳を覗き込みながら、やっぱり気のせいじゃなかったね、と笑う。どこまでもいつも通りな笑顔が、逆に遊星には恐ろしかった。何せ、気づかれているというのに、彼はどこまでも平素だ。
 普通、授業が疎かになってしまうほど見られていたと思えば、気味が悪いと思うだろう。


「どうして僕のことを見ていたのか、教えてもらってもいいかなあ」
「そ、……それは、」
「言えないような理由なの?」
「…………」


 返事に窮し、遊星は言葉を詰まらせた。視線を合わすまいと俯き、唇を噛み締める。答えられないとわかっているにも関わらず、ブルーノはなおも問い詰めてきた。

「ねえ、どうして?」
「……それ、は、……その、」
「………そういうことをしてるとね。勘違いされちゃうよ?」

 ブルーノは溜息をついたかと思うと、不意に遊星の腕を掴んだ。ぐい、とそのまま思い切り引き寄せられる。あわやパソコンの乗った台にぶつかるかと思いきや、それはブルーノのもう片方の手に阻止された。2メートル近い長躯を最大限に生かし、ブルーノは思い切りからだを伸ばして遊星にくちづけた。
 軽く重なる唇。遊星は、未知の感触に目を白黒させる。
 舌でゆるく唇を舐められると、こわばっていた体がびくりと小さく震えた。その反応をどう思ってか、それ以上踏み込むようなことはせず、ブルーノはゆっくりと唇を離していく。

「……あ、」
「もうちょっと警戒心とか持った方がいいんじゃないかな。……ね、遊星」

 そう囁かれるた直後、下校時刻5分前を告げるチャイムが鳴り響いた。ブルーノはぱっと遊星の手を放して、いつも通りの笑顔で、何事もなかったかのように声をかける。


「大変だ、あと5分で時間になっちゃうね。早く帰った方がいいよ、不動君」


 善意からの言葉に、遊星は頷くことしかできなかった。また明日ね、とひらひら手を振るブルーノは、いつものブルーノだった。
 唇に触れた感触を、まだはっきりと思い出せてしまう。
 明日もまた彼の授業がある。運の悪いことに、遊星は教室でも特別教室でも、一番前の席を陣取っていた。明日、間近で彼の顔を見なければならない。学校を休んでしまいたい、心からそう思ったのは今日が初めてだった。






(よおゆーせー!今部活終わったんだけど、一緒に……ん?顔赤いけど、なんだ、熱?)
(そ、そういうわけじゃ、ない……っいいからはやく、はやく帰るぞ、クロウ)
(な、なんだよ、せかすなよ!)




――――――――――
衝撃(の超設定と超展開)。



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