「どういうこと?」
「んー……話せば長くなるけど」
こんな見ず知らずの人に喋るのはどうかと思ったけど、私のことを知ってるみたいだし、キーパーソンとして確保しておこう。
「手短に言うと、記憶喪失になりました」
「……は?」
「嘘じゃない。現に、君のことを知らないからね」
「それは、あんたが演技をしてんだろ?」
焦るように言葉を紡ぐ彼。でも、残念だけど、私は覚えてないの。そう伝えると、彼は肩をガックリ落としたが、瞬時に顔を上げた。
「じゃあもう一回自己紹介しよう!」
「やだ、めんどい、お腹すいた」
「全否定かよ!まあ俺も腹へってますし、食べながらちょっと」
「はいはい」
「あ、でも俺弁当忘れた……」
「……飴、あるよ?」
「いや、大丈夫…」
適当なベンチに座り、買ってもらった焼きそばパンを頬張る。うん、美味しい。
「……なんか、野良猫に餌付けしてるみてえ」
「なひ?なんかひっは?(なに?なんか言った?)」
「なんでもねーっす。ていうか口の中のやつ飲み込んでから喋ろ」
彼の言い付け通りに、ごくっと飲み込んでから本題に入る。
「で、あなたのお名前は?」
「紀田正臣!現在16歳で、誕生日は6月19日!」
「ふーん」
「……もっと反応してくれよ」
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