あの夜、私は本気で死ぬつもりだったんだけど、ゴキブリ並みの強い生命力のおかげで生きていた。

その代わり、私が通っていた来良の女子が自殺した。即死だと聞いて私はとっても羨ましく思った。


「千景君…もう寝よぉ、ふにゃああ」


でも、千景君に拾われてからその考えは封印というか、止めるようにした。彼にはバレちゃいけないから、絶対に。


「ん……ちょっと待ってな。はいもしもし」

「……むう」


千景君はとっても優しい。私が死にそうになったら、悲しんでくれる。寂しがってくれる。

懐かしい感覚が手放せなくなった。いままでは憎まれるか嫌われる方が安心できた。


「…そう、か。わかった。ちゃんと言っておくから。ありがとな、じゃあ」

「千景君、誰から…?」

「彼女。タマのこと、折原が嗅ぎ回ってるって。警戒しなきゃな」

「あはは、臨也さんは相変わらずだね。警戒しまーす」


私のゆるい返事に千景君はムッとした表情になった。ふふ、愛されてますなあ!


「おバカ。もっと警戒心を持ちやがれ。首輪つけなきゃいけないのか〜?」

「ふふ、やだ、千景君こそばゆい」

「タマ、勝手に死んだり拉致られんなよ」


ぎゅう、と後ろから抱きしめてくる千景君に苦笑しながら、私は「わかってる」と返事をした。

わかってるよ、千景君も私も寂しがりだもんね。お互いにがんばらなきゃだもの。いとおしい幸せに、私は微笑んだ。




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